昨今、「コワーキングスペース」という場所で仕事をする働き方に注目が集まっています。元々「コワーキング」とは個人事業者や起業家、在宅勤務が許可されている会社員のような、場所に縛りがない環境で働いている人たちによるワークスタイルのことです。コワーキングスペースは、よくレンタルオフィスなどと類似して見られますが、二者の決定的な違いは、レンタルオフィスは会議室や個室に分けられているのに対し、コワーキングスペースはカフェのようなオープンスペースによるシェアオフィスであるという点です。これによりのびのびとした環境下で仕事ができるところも魅力の1つです。
コロナ禍により「テレワーク」という働き方が定着したことから、会社で働くという概念が薄れ、それに伴いコワーキングスペースの需要は年々上昇しています。一般社団法人「大都市政策研究機構」の調査によると、全国の施設数では、2019年6月の799施設から、2020年8月で1062施設、2021年2月で1379施設へと、およそ1年で1.33倍、1年半で1.73倍と大幅に増加しています。
このように増加の一途を辿るコワーキングスペースが日本で浸透したのは2010年であり、歴史が浅い方です。そしてここからさらにコワーキングスペースの需要が増すと考えると、DX(デジタルトランスフォーメーション)によるスペースの「効率化・利便性」の向上が必要不可欠になるでしょう。
コワーキングスペースにおいてなぜDX化が必要不可欠になり得るのか、また実際にコワーキングスペースを活用し新たな可能性を作り出している海外の視点を含め見ていきましょう。
コワーキングスペースにおけるDXとは
まずDXとは、経済産業省の「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX 推進ガイドライン)」で以下のように定義づけされています。
企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。
つまりデジタル化を浸透させることで、時代に沿った新たな価値を作り出し続けることがDX化の本質的な意味です。さまざまな定義はありますが、bizlyでは「進化したデジタル技術を浸透させることで人々の生活をより良いものへと変革すること」をDX化と定義します。
例えば、予約システムを導入して「お客様との予約・決済・顧客情報・来店来場状況をデジタル化し、一元化して管理する」こともDX化の例の1つです。
これにより「受付無人化の実現」や「顧客の在籍状況を分析し、より効率的な運営を実現する」といった、新しい価値や考え方を見出すことが可能になります。
これから施設が増加するとみられ、さらに多種多様な人がコワーキングスペースを活用し始めると考えるとDX化は何よりも必要になってくるでしょう。
また、テクノロジーの力を用いて、コワーキングスペースという場所への「効率化・安全性」を促進するサービスを活用している例を3つ紹介します。
コワーキングスペースにおけるDX化活用例
1.予約システム
画像引用元:RESERVA公式サイト内 コワーキングスペースの予約システム
予約システムは予約受付→決済→顧客管理→集客までを全て自動化でき、管理業務全体のスピード・正確性の向上を可能にするものです。また、今回紹介する業界No.1の「RESERVA(レゼルバ)」には来店・来場処理機能があります。この機能を用いることで受付の人員コスト削減や、人との接触を避けたコロナウイルス感染予防対策も期待できます。
2.顔認証クラウド入退室管理システム
画像引用元:SECURE AI Office Base 公式ホームページ
SECURE(セキュア)の顔認証クラウド型入退室管理システム「AI Office Base(AIオフィスベース)」はコワーキングスペースへの来店来場処理をAIの顔認証を用いて瞬時に判断し、安全性と効率化を実現します。検温やマスクチェック機能も搭載されていることから、新型コロナウイルス感染対策にもなります。また、在籍情報の正確性が高く、遠隔からでもコワーキングスペースの管理・運営を実現します。
3.ワクチン証明QRコード
凸版印刷が開発した「PASS-CODE™(パスコード)」はワクチン証明QRコードを提示できるアプリケーションであり、新型コロナウイルスワクチンの接種履歴やPCR検査などの結果を一元管理することが可能になります。さまざまな人が集まるコワーキングスペースには衛生的な面からもこれから重宝されるサービスとなり得るでしょう。
コワーキングスペースDX化の未来
コロナ禍により働き方が多様化している今、「テレワーク」という働き方が急速に広がり、コワーキングスペースの需要は上がり続けています。その中でコワーキングスペースのDX化は「さらに質の高い環境で働けるようにする」ことが今後より求められるでしょう。
そして、これから「コワーキングスペース」は働き方だけでなく、新しいビジネスの可能性を生み出す場所として大きな役割を担っていくかもしれません。日本よりも早くにコワーキングスペースの普及が進んでいる海外では、コワーキングスペースを「新しい利益が生まれる場」として見ている人が多いです。「欧州におけるコワーキング・スペースに関するカンファレンス(2010)」にて公開されたアンケートによると、87%の回答者が「オフィス利用者同士で新しいプロジェクト(仕事)が生まれた」と答えています。これはさまざまな業種が集まるオープンスペースだからこそ見出されるものでしょう。
この考えを日本で実現させるためにはまず、何よりも安全対策が必須です。徹底した安全管理を実現するDX化が現在着々と進んでいることから、DX化はこのような考え方を実現する足掛けとなるような存在になり得るかもしれません。
まとめ
コワーキングスペースは多くの可能性をもった空間です。以前は一定職種の方しか使用していなかったものが今では多くの方に認識されるようになりました。このフレキシブルな働き方を広めるためにはまず、その働く場の利便性が必要不可欠です。よってDX化はコワーキングスペースの促進にもこれから大きな役割を担っていくでしょう。