フードテックとは|基礎から学ぶ概要解説!

フードテックとは|基礎から学ぶ概要解説!

フードテックとは「食のフード」(Food)テクノロジー(Technology)を組み合わせた造語です。最先端のIT技術を活用して、食の持つ可能性を広げるフードテックは世界から注目を集めています。今後日本の成長産業としても期待されている「最も注目度の高い業界」の1つといえます。

フードテック流行の背景

大きな理由としては、「世界の人口増加に伴う食糧不足・栄養不足」等が挙げられます。フードテックの活用は食糧危機への対策につながり、新たな成長分野として雇用を生み出す観点から経済効果も期待されています。

・食中毒の防止
・傷んだ食材を誤って食べて健康被害を引き起こす
・「傷みにくい食材」を作ることで安定供給を実現する

加えて、食の安全を守ることもフードテックが注目されている理由の1つです。

最新テクノロジーを活用した「異物混入を防止する新たな仕組み」や「長期保存可能なパッケージ開発」等も開発が進んでいくことが見込まれます。

市場規模は700兆円? 食のIT革命「フードテック」が注目されている理由とは(ビズサプリ)

フードテックの誕生

Fin-Tech(フィンテック:金融)
Ed-Tech(エドテック:教育)
Con-Tech(コンテック:建設)
Agri-Tech(アグリテック:農業)
不動産テック
スポーツテック

など、ここ数年、「業界+テック」の動きが多くの業界でトレンド化し、インターネット、AI技術、IoTなど、IT技術が様々なカタチで導入されています。フードテックは一見「食べものとデジタル」という関係がなさそうにみえるものですが、食卓に並ぶまでの生産、栽培、加工、これらの工程にテクノロジーが使われることを指します。

フードテックが欧米諸国で盛んに議論され、フードテックをテーマとする催しが開催され始めたのは2015年頃からといわれています。宗教上議論されるハラル食や貧困地域での飢餓などについて、特に関心の強い欧米諸国では、食料問題などの社会的課題を解決に寄与するビジネスモデルとして注目されています。

世界の総人口は急速に増加し続けており、現在の78億人より3割ほど増え、98億人に達する統計もあります。(参考:国際広報連合センター)日本では人口減少が社会問題化する中で世界は逆行し、更なる飢餓などが懸念されています。

食糧需要は1.7倍となる試算もあり、このままで食糧危機に陥り悪化の一途をたどるおそれがあります。その一方で先進国では、食料の廃棄問題が浮き彫りとなり、需要と共有のアンバランス化は地球規模の課題となっています。

日本における食品ロスについては、農林水産省ホームページによると、日本では年間612万トンの食品廃棄物があり、世界では13億トンのまだ食べられる食料が廃棄されているとされています。

画像引用元:厚生労働省ホームページaff(あふ) バックナンバー 2020年
 20年10月号 食品ロスの現状を知る

こうしたなか、テクノロジーを活用した食の問題の解決や、食の可能性を広げる「フードテック」の概念が現れ、注目がされています。

フードテックの具体例

大豆ミート」などで知られる植物由来の代替肉、細胞培養技術による培養肉を作り食糧危機を回避することができます。bizlyでは、今後これらのテーマを題材にした記事を公開していきます。日本国内に留まらず世界中のフードテック産業について扱う予定です。

フードテックとSDGs

国連のSDGs(持続可能な開発目標)において、2030年までに世界全体の一人あたりの食料廃棄を半減させ、収穫後損失などの食品ロスを減少させるとの目標を掲げています。

日本政府も「SDGsアクションプラン2018」において、家庭の食品ロス削減の取り組みの普及啓発、食品産業に対するフードバンク活動の推進、サプライチェーンの商習慣の見直しなどの取り組みを始めています。

このようなSDGsの目標達成に向けて、フードテックは注目されています。

SDGsとはSustainable Development Goalsの略であり、日本語では持続可能な開発目標と言います。これは2015年9月、ニューヨークの国連本部で開催された国連持続可能な開発サミットで定められました。

内容は、2016年~2030年までの15年間で、全ての人にとってより良い未来をつくるために達成すべき目標を以下のように17個にまとめたものです。

持続可能な世界を実現するための17のゴール

①貧困をなくそう
②飢餓をゼロに
③すべての人に健康と福祉を

④質の高い教育をみんなに
⑤ジェンダー平等を実現しよう
⑥安全な水とトイレを世界中に
⑦エネルギーをみんなに、そしてクリーンに
⑧働きがいも経済成長も
⑨産業と技術革新の基盤をつくろう
⑩人や国の不平等をなくそう
⑪住み続けられるまちづくりを
⑫つくる責任、つかう責任
⑬気候変動に具体的な対策を
⑭海の豊かさを守ろう
⑮陸の豊かさも守ろう
⑯平和と公正をすべての人に
⑰パートナーシップで目標を達成しよう

フードテックが注目されたもう一つの背景

フードテックが注目されたもう一つ背景として「将来のタンパク源不足」があります。2050年には地球100億人時代が到来するという推計があり、発展途上国の成長、中間層の増加により生活に質を求める層が増えることが考えられます。

すると肉の消費が増えて、現在の家畜の生産量が追い付かずに、タンパク源が不足する懸念が指摘されています。食肉ビジネスは牛の放牧などで資源を無駄にし、森林破壊や温暖化の一因になっているとも言われており、環境問題になっていました。

そこで、代替肉であれば環境にも配慮しながら食肉の生産量を減らせる効果が期待され、世界の企業家や投資家が関心を持っているのがフードテックを活用した人工肉です。

人工肉とは、その名のとおり人工的に作られる製品のことで、大きく分けて2つの種類があります。 1つは植物由来の素材で作った(に見える食品)で、もう1つは動物の人工的に培養したものです。これが前述の培養肉です。

日本でも代替肉の研究開発をするベンチャー企業が台頭し始めています。

NEXT MEATS(ネクストミーツ株式会社)

事業内容
・代替肉の開発
・代替肉を使用した商品の企画・製造
・通販事業・関連メディア運営

画像引用元:NEXT MEATS公式ホームページ
引用元:YouTube 「地球を終わらせない」ネクストミーツ – 日本初、代替肉ブランドによるテレビCM 04/2021

フードテックが取り巻く業界

フードテックを取り巻く産業は多岐にわたり、農業、テクノロジー、AI、ロボット技術、IT、食品ブランド、飲食業などが名乗りを上げており、以下の図で示されるように、日本国内企業の多く台頭しています。

画像引用元:FoodClip 食ビジネスの動向やトレンドを届ける専門メディア
[カオスマップ]食×SDGsプロダクト 2021(2020年12月記事より)

コンビニ弁当の廃棄や学校給食での大量廃棄、昨今では東京五輪における弁当廃棄などが社会でも取り上げられ、日本人の意識の中にも食品ロス(フードロス)の認知、課題認識が増えてきています。

五輪の弁当大量廃棄、なぜ起きた? 食品ロス減らす鍵は(朝日新聞デジタル)

フードテックのメリット/デメリット

これらの話を整理しますと、フードテックのメリットには冒頭に挙げた

・食中毒の防止
・傷んだ食材を誤って食べて健康被害を引き起こす
・「傷みにくい食材」を作ることで安定供給を実現する

に加えて、メリットには以下が挙げられます。

・食糧不足
・飢餓とフードロス
・菜食主義のためのたんぱく質
・食の安全
・生産者不足(人口減少)

デメリットは、開発にお金がかかるという1点が挙げられます。

フードテックの取り組みには、大手企業または、資金調達を受けたベンチャー企業などが参入し、その取り組みが注目されていますが、まだまだ地方や、第一次産業の分野には広く行き渡っていません。

また、野菜を工場で育てる技術は一見衛生的で効率よく思えますが、太陽の代わりの光が必要となり、電気代コストが大きくかかります。人工的に雨を降らすためには設備を用意しデータ管理のもと植物に水分を与える必要があり、水道代もかかります。フードテック参入へはこうした初期投資の課題がまだまだ多く、急速に広がりを見せるにはハードルが多くあります。

しかし今後の食糧難、原料難に備えるためにもこうした技術開発は先行投資として注目され続けることは間違いありません。

フードテックの事例

フードテックベンチャーが東京造形大学と産学協同!植物肉とデザインの融和へ

フードテックに関してはベンチャー企業と大学の産学連携の動きも顕著になってきました。

1)代替肉

前述のとおり、植物由来の素材で作った(に見える食品)と、動物の人工的に培養したものが代替肉です。以下の企業が取り組みを行っています。

大塚食品(日本)「ゼロミート」
日本ハム(日本)「NatuMeat(ナチュミート)」
ネクストミーツ(日本)
ベジファーム(台湾)
ビヨンドミート(アメリカ)
インポッシブルフーズ(アメリカ)
ベジタリアンブッチャー(オランダ)

2)陸上養殖

自然界の環境で養殖せず、陸上の水槽等を活用し効率的・安全に養殖する技術があります。

株式会社アクアテックジャパン
FRD Japan
ジャパンマリンポニックス

3)ITの活用

農業分野×IT分野等の組み合わせで、今までにない生産方法が登場し始めています。

3Dフードプリンタ「Foodini」(株式会社INNOVA GLOBAL)
素材大豆ミート「ダイズラボ」(マルコメ)
昆虫食「バッタ」のプロテインパウダー(株式会社アールオーエヌ)
ヤンマー「ロボットトラクター」(ヤンマー)
スマート農場「ゼロアグリ」(株式会社ルートレック・ネットワークス)

引用元:株式会社INNOVA GLOBALホームページ

まとめ

今回はフードテックの基礎概要として、

これらをまとめて解説しました。今後bizlyでは更に深掘りした記事を公開していきます。