採用管理システム、通称「ATS」は、(Applicant:応募者、Tracking :追跡、System:システム)の略で、求人応募者の管理、面接調整、選考プロセス管理、採用通知まで、システム一括で管理することができ、人材採用の手間やコストが大幅に改善されるシステムです。
デジタル庁の新設などにより、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)化が叫ばれる中、採用活動においても効率化が求められます。中でもIT後進国と言われる日本では対面による、数回にわたる面接が未だ主流となっており、今後の競争を勝ち抜くためには、DX化の取り組みを今から始めることが必要です。顧客に対するデジタル化の動きのみならず、社内の体制、前例主義で形骸化していた習慣に対してもDX化を推し進めることで、社員の働き方改革にも寄与されます。
これまでの人材採用で多くの企業が抱えていた課題として、
❐応募者や選考プロセスの管理、共有を人事担当者が別々に作業している。
❐面接調整や、合否通知で一日の仕事が終わってしまう。
❐採用の課題(書類通過率、内定通知受諾率等)抽出、分析ができない 。
こうしたものが挙げられ、自社で該当すると感じた企業の方も多いはずです。先に答えをお伝えしますが、採用管理システム(ATS)を使えば、
- 複数の求人サイトに同時に求人掲載でき、応募状況も一つのシステム内で一括管理可能
- 応募者の履歴書、職務経歴書、選考段階をシステム内で一覧表示が可能
- 選考の日程調整、合否の通知などが全て自動化、煩雑な業務が大幅に削減
- 採用活動のデータがシステムに蓄積され、採用の課題(例:内定辞退率)が見える化
こうした機能を、無料で利用することもできるサービスがあるため、人材採用を考える企業が使わない手はありません。
2020年現在、日本で圧倒的に利用企業数が多い、採用管理システムは以下の4社です。解説不要ですぐに始めたい方は各社のサイトを閲覧してください。
- Talentio(タレンティオ)【公式ページ】
- ジョブカン(株式会社 Donuts) 【公式ページ】
- リクナビHRTech(リクルート) 【公式ページ】
- HRMOS(ハーモス)【公式ページ】
採用管理システム(ATS)の機能
採用管理システム(ATS)はいまや、日本国内で50以上のサービスが展開されているものであり、どのATSが自社に合うか、など判断が難しくなっています。そこで本記事では、採用管理システムが最低限持っているべき機能、サービスごとによって特色が出る点を詳しく解説します。
ベーシック機能
- 求人作成及び投稿
- 応募情報管理
- 候補者情報/選考進捗管理
- 面接日程調整
- 選考プロセス社内共有
- 採用合否連絡
- 選考結果通知
これらの機能は「採用管理」のうえで最低限必要な機能で、ほとんどの採用管理システム(ATS)では実装されています。反対に実装されていない場合は、貴社の求める機能が足りているのか、注意して利用することをおススメします。
特色が出る機能
上記のベーシックの機能への付加価値として、各社が工夫して取り入れているの機能をリストにしています。
- 自社オリジナル求人応募ページ作成
- 求人媒体への自動求人掲載(Indeedやビズリーチに求人が掲載される)
- アラートメール機能
- 候補者とのメッセージ機能
- 説明会・親睦会のスケジュール作成管理
- SSL対応のクラウド管理(セキュリティ面)
- 選考/内定辞退の理由がわかる
- API連携(※)
- タレントプール管理機能(※)
- リファーラル候補者管理(※)
一見、全ての機能を網羅しているものが良いように感じますが、実際に利用しない機能がある採用管理システムの場合、使い勝手が悪かったり、機能が多すぎるがゆえ、システム操作に不慣れの人事担当者の習得が遅れることも考えられますので、注意が必要です。
API連携
※API(アプリケーション プログラム インターフェイス)とは、利用するシステムと他社のシステムを連携したり、外部サービスから一部機能を呼び出したりすることです。(例:Googleカレンダーと連携、LINEとの連携で応募者と面接調整)たとえば、面接調整をメールでするとタイムラグが生まれてしまいますが、LINEと連携することでタイムリーに候補者とコンタクトが取れます。
タレントプール
タレントプールとは、有望な人材(タレント)をデータ蓄積(プール)すること で、今すぐ採用はしないが会社に興味をもった候補者、今はご縁がないけれど接点を維持したい有望な人材と関係性を持っておくことです。
Facebook、Instagram、Twitterなどをお使いの方ならイメージしやすいですが、「友だち」「フォロー」という関係を、企業と候補者が気軽に築くことがタレントプールの定義です。
採用方法はこれまで、書類選考~面接~採用合否~入社というプロセスを踏むものでしたが、そのときどきの求人ポジション、求人枠(人数)、候補者で合否で白黒つけるため、「あのときのあの人が今応募したら採用するのに・・」という「ご縁」や「タイミング」で貴重な人材を逃すリスクが減ります。
人材が必要なときに、自社データベースにプールしたタレント(候補者)に声をかけることができるのがタレントプールという採用方法で、すでに欧米諸国では一般的に取り入れられています。
では「タレントプールを利用したいけど、何をすれば良いか?」というと、具体的には、自社採用サイトがある場合は、そこにタレントプール機能を搭載したATSのリンクを「埋め込む」だけで、あとは、ATSシステム内で登録した人材情報を閲覧し、興味があればコンタクトをする流れになります。
冒頭で紹介したTalentio(タレンティオ)【公式ページ】にもこの機能がありますので、まずはここから始めると概要が掴めるはずです。
リファーラル
リファーラル:Referral( 訳「紹介・推薦」)
リファーラル採用とは、社員全員が人事部(採用担当)のような役割をもち、企業の求人募集の要件に合う知人、取引先の人材へ声をかけ(スカウト)企業に紹介することを言います。なお、日本でも習慣としてある、縁故採用との違いには
縁故採用・・・「社員自ら」が「家族や知人」を候補人材として企業に採用を促す
リファーラル採用・・・「企業」が社員に対し「周囲の人材」の紹介を促す制度を設ける
このように定義づけされていますが、明確な違いは無いようです。
自社の採用コスト、人事部門の体力(どこまでシステムを使いこなせる担当者がいるか)を考え、採用管理システム(ATS)を選定することをおススメします。各社サービスには、無料お試し期間などがありますので、積極的に利用してみると良いかもしれません。
採用管理システム(ATS)の導入事例
採用管理システム(ATS)をリリースする企業のうち、導入実績が多いところでは、概ね2,000~3,000社ほどの導入があるようで、日本国内では、月に数十件の面接を実施する大手企業、若手の起業家、ITやベンチャー企業を中心とするユーザーが利用している傾向にあります。
なかでもATSシステム最大手 「ジョブカン」では、『採用管理』のほか、『経費精算』『労務管理』と関連サービスを展開しており、企業発表では累計30,000社以上が利用していることが分かっています。当「bizly」の調査では、おそらく日本国内の5,000社程度が実際に採用管理システム(ATS)を使っているものと試算しています。
低コストで、採用管理業務が軽減、新たな採用手法を取り入れることができることから、全国の企業に普及していくことは間違いなく、採用×DX化における”ATS”は最重要キーワードとなります。
DX人材採用の展望
DX人材採用の大切な点は、「いかに採用コストを削減し、優秀な人材を採用できるか」この1点にかかっています。これまで人材紹介ビジネスが利益を創出し、市場を独占してきた採用市場に大きな転換期が訪れており、「採用コスト0」で、「人事部の負担を減らす」ことが、採用管理システムによって、実現されます。
DX化における採用管理システムの重要性
これまでの人材採用は、企業を例に挙げると、「人事部」が一極集中で、採用活動に追われ、面接担当の役員との調整、候補者との調整にあくせくすることが習慣化されてきましたが、IoTやAI技術が進む2020年現代において、こうした「非効率さ」は、すぐに解決されるべきものです。
前述のように、海外ではこうした採用管理システムは急速に拡大、導入されておりますが、日本の採用市場は、「転職」が文化として根付いていない、世界でも珍しい国であったため、こうしたトレンドの動きに鈍い傾向があるものと思われます。
「システム」と聞くと抵抗感を感じる方が多いかとは思いますが、今後企業が生き残るためには、営業(オンライン活用)、マーケティング(WEB広告)、経営管理(システム化)あらゆる面で、IT技術の利用が最も有用かつ有益な選択肢になり、これらを自社に取り入れる柔軟性が2020年代を生き残る術となります。
採用管理システム(ATS)の一覧
最後に、冒頭に紹介しきれなかった他各社の採用管理システム(ATS)のうち、導入実績の多さや人事担当者の評価が高いものを厳選し、リンクを掲載します。
HERP Hire(株式会社HERP)
採用一括かんりくん(株式会社Roots)
MOCHICA(株式会社ネオキャリア)
Hirehub(エン・ジャパン株式会社)
ジョブスイート キャリア (株式会社ステラス)
自社の採用ターゲット(新卒or中途採用)、業界や職種などに合わせて最適なシステムをお選びください。