昨今、コロナ禍により在宅生活が余儀なくされている人々の増加により「フィットネス」という活動に注目が集まっています。フィットネスとは「健康や体力の維持・向上を目的として行う運動」のことを指します。類似したエクササイズとの違いは、両者とも「運動をする」という点は同じですが、エクササイズが「運動」に重きを置いたものとすると、フィットネスは「健康」に重きを置いたものといえるところです。
在宅生活において深刻な問題は「運動不足」のほかに、コロナ禍による普段の生活との環境の変化から、メンタル面の不調もあります。フィットネスはダイエットのみならず、食事なども含めて総合的に「健康」を作り出すものであることから、現在需要が高まっています。
しかし、経済産業省の調査によると、様々なサービス業の活況度を示す第3次産業活動指数でスポーツ施設提供業の内訳(利用者数の変動)を見てみると、フィットネスクラブは新型コロナウイルスの影響で活況度が5割弱に低減するという大きな打撃を受けています。これはフィットネスクラブが室内で行われるものが多いことが原因として考えられます。
この需要と環境の不一致を乗り越えるためには、デジタルトランスフォーメーション(DX)の導入が重要です。そして、このコロナ禍だからこそDX化による新しいフィットネスの在り方が問われています。
フィットネスにおけるDX化とは何か、実際にDX化を用いて新たなフィットネスの形を作り出している事例を見ながら考えていきましょう。
フィットネスにおけるDXとは
まずDXとは、経済産業省の「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX 推進ガイドライン)」で以下のように定義づけされています。
企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。
つまりデジタル化を浸透させることで、時代に沿った新たな価値を作り出し続けることがDX化の本質的な意味です。さまざまな定義はありますが、bizlyでは「進化したデジタル技術を浸透させることで人々の生活をより良いものへと変革すること」をDX化と定義します。
例えば、予約システムを導入して「お客様との予約・決済・顧客情報・来店来場状況をデジタル化し、一元化して管理する」こともDX化の例の1つです。
これにより「受付無人化の実現」や「顧客の在籍状況を分析し、より効率的な運営を実現する」といった、新しい価値や考え方を見出すことが可能になります。
フィットネスを行う上で、密室な空間でのやり取りや混雑状況が心配されています。このような取り組みは、その懸念点を取り除く新たな価値を生み出すでしょう。
また、テクノロジーの力を用いて、フィットネスを生活に取り入れやすくする新たな取り組みやサービスを提供している例を3つ紹介します。
フィットネスにおけるDX活用例
1.顧客の運動情報をデジタル上で可視化
画像引用元:My Zone | GoodLife Fitness(グッドライフフィットネス)
GoodLife Fitnessはデジタル・ウェアラブルデバイス「My Zone(マイゾーン)」を提供しています。このデバイスはフィットネス時に装着することで、顧客が今どのような運動状態であるかどうかを、トレーナーが離れていてもデジタル化して可視化できるシステムのことを言います。
これにより、フィットネス時における場所の制約をなくし、自由な場所で運動しながらトレーナーの的確なサポートを受けることを可能にしています。
2.ジム運営をAI化
画像引用元:GYM DX(ジムDX)公式ホームページ
GYMDXとはジム内に専用AIカメラを設置し、ジム運営をAI化できるクラウドシステムです。これは自動危険・動向探知機能により、スタッフは自動で利用者の状態や稼働率を把握することができ、利用者はジムの混雑状況やマシンの空き状態をネットワーク上で可視化することができます。
AIと人間の力により圧倒的な運営コストパフォーマンスを可能にするほか、店舗状況を可視化できるシステムは顧客満足度にも繋がります。
3.ヘルスケアアプリケーション
画像引用元:株式会社Beatfit(ビートフィット)公式ホームページ
こちらは株式会社BeatFitが開発した「BeatFit for Gym(ビートフィット・フォー・ジム)」という、次世代のフィットネス価値を実現するアプリケーションです。ジムにいてもいなくても会員にフィットネスコンテンツを提供することができます。
また、このフィットネスコンテンツは「運動を習慣づけること」を目的としており、音声メディアなども活用されています。フィットネスを生活の中でも取り入れていくという新たな視点を取り入れています。
フィットネスの未来
フィットネスはコロナ禍で、さまざまな在り方が構築され続けています。フィットネスを生活の一部として考える人々も増加し、アフターコロナ後もフィットネスへの関心は高まり続けるでしょう。
多くの可能性を秘めているフィットネスの中で、Precor(プリコー)という会社ではフィットネスを仮想現実 (VR)や拡張現実 (AR)を用いて提供するサービスの構築を始めています。まるで険しい山々や宇宙空間にいるかのような状況は、ワクワク感を高め、リフレッシュ効果の増大も期待されます。これからはエンターテインメントのような要素もフィットネスに必要とされていくのかもしれません。
まとめ
フィットネスの在り方は今後さらに多様化していくでしょう。DX化により新たなフィットネスの価値が生み出されていることは、今後のフィットネス文化の広がりに繋がると期待されます。また、「健康」との向き合い方について新型コロナウイルスの拡大から価値観が変わったという人も多いでしょう。フィットネスの在り方は、社会の形やDX化に基づいてこれからも変化し続けます。