コアネット教育総合研究所の「2024 年首都圏中学入試総括レポート」によると、2024年の首都圏の中学受験者数は65,600名となり、9年ぶりに受験者数は減少しました。一方で、中学受験率は22.7%で、過去最高を記録した2023年入試の17.9%を上回りました。
また、首都圏模試センターの調査では2023年の小学6年生のうち私立・国立中学受験率は18.12%であり、2014年から10年連続で上昇し続けています。この割合は、小学6年生の4.7人に1人が中学受験をしていることを意味します。
現在の日本では受験が早期化し、中学受験をする児童が年々増え続けている状況です。そのため、学習方法のひとつである、マンツーマンで授業を受けられる家庭教師の需要が高まっています。
そこで重要なカギを握るのが「デジタルトランスフォーメーション(以下、DX)」です。経済産業省の「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX 推進ガイドライン)」では、DXを以下のように定義づけしています。
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」
受験戦争が激化する中で、学習効率を向上させ、生徒一人ひとりに合わせた授業を行うためにはDX(デジタルトランスフォーメーション)化の推進が欠かせません。一例として、AIの活用が生徒の苦手分野の克服に貢献することが挙げられます。
そこで本記事では、家庭教師業界におけるDXに着目し、その課題やメリット、デメリット、そして国内における実際の導入事例を紹介し、実態を明らかにしていきます。
家庭教師業界のDX化における課題
家庭教師を含む教育業界は、DX化が遅れていると指摘されています。学校教育を例にあげれば、昔から教育のスタイルや方法に大きな変化がないことがその一因であると考えられます。以下の項目で、具体的に家庭教師業界のDX化が進んでいない理由について解説します。
1.指導者のITリテラシー不足
教育DXを実現するには、ITに精通した人材の確保が不可欠です。オンラインで授業できる環境や体制を整備できても、講師のITリテラシーが低いままではデジタル技術を活かした授業は行えません。そのため、ITリテラシーの高い人材を確保、育成する必要があります。
日本でDX化が本格的に導入され始めたのは、2018年以降です。それ以前から活動している家庭教師の大半は、デジタル機器を使用せずに授業を行う傾向が見られます。そのため、デジタル機器を学ぶ機会がない限り、講師のITリテラシーの向上はなかなか望めません。このことが、家庭教師事業にDX化が浸透しづらい理由の1つです。対策として、講師のIT研修を義務付ける、ICT機器やツールの利用マニュアルを整備するなどの取り組みが挙げられます。
2.セキュリティ対策
DX化を進めるうえで、契約書や顧客の個人情報をデータで管理するため、セキュリティ対策を強化する必要があります。特に家庭教師業界は、生徒の個人情報を取り扱うため、厳重な管理体制が求められます。ずさんな管理では、企業に対しての不信感は募り、信用を失ってしまう可能性もあります。企業を守るためにも、個人情報の取り扱いには十分な注意が必須です。
家庭教師業界がDX化するメリットとデメリット
メリット
1.生徒一人ひとりに寄り添った学習サポートが可能
オンライン授業は毎回学習履歴が蓄積されるため、学習の進捗管理がしやすいです。この学習データを活用することで、家庭教師は生徒の得意不得意を的確に把握し、個々に最適化された授業や教材を提供できます。
オンライン授業だけに限らず、AI学習診断も個々の学習をサポートします。AI学習診断を用いることで自身の単元別の理解度を把握でき、効率よく苦手分野を学習できます。
2.リモートで受けれる授業形態
家庭教師業界のDX化の代表的な例として、オンライン授業が存在します。オンライン授業のメリットして、いつでも自分の好きな場所で受講できる点が挙げられます。不登校や持病などの理由から、外出が困難な生徒でも自分のペースで学習が可能です。
3.業務の効率化
従来の家庭教師は、授業日程の決定や変更など、授業以外の業務も自身で行う必要がありました。しかし、家庭教師業界のDX化により、これらの業務を効率よく行えるようになります。具体的には、予約管理システムの導入が挙げられます。なかでも、予約管理システム「RESERVA」では、インターネット上で24時間いつでも授業予約を受け付けられるため、講師は負担が減り、より授業に集中して臨むことができます。
参考ページ:RESERVA公式サイト「家庭教師のための予約システム」
デメリット
1.システム導入時、インターネットの整備時の費用
オンラインで授業を行う際、多大な費用が掛かることがデメリットのひとつです。インターネットを利用するための高速ネットワーク環境の構築をはじめ、生徒が学習に使用する端末も用意する必要があります。ほかにも、教育に必要なツールやシステムなどを準備しなくてはならず、多額の初期費用が発生します。また、通信環境や端末に不具合があると授業への参加が難しくなるため、生徒の家庭にも十分なネットワーク環境が求められます。このように、生徒の家庭に自己負担を強いるケースも考えられるため、導入にあたっては十分な配慮が望まれます。
2.対面授業よりも質問や発言がしにくい
オンライン授業では、生徒は先生の反応を見ることが難しく、深いコミュニケーションを取りにくい問題があります。 その結果、質問や発言がしづらいという課題も生じやすくなります。
3.身体への負荷
オンライン授業では、パソコンの液晶画面を長時間直視し、イヤホンで音声を聞き続ける必要があるため、目や耳に大きな負担がかかります。人によっては目や耳・首・肩が疲れやすくなり、場合によっては痛みを感じるケースも発生します。
家庭教師業界におけるDX導入事例
ここからは家庭教師業界のDX導入の例を紹介します。
1.予約システム
予約システムは予約受付→決済→顧客管理→集客まですべて自動化し、データ管理の効率化を可能にします。
「RESERVA(レゼルバ)」は導入数30万社を超える、業界トップシェアのクラウド型予約システムです。利用業態は350種類以上にのぼり、最短3分でサイトを作成できるシンプルな操作性が高く評価されています。無料のフリープランから利用でき、初めて予約システムを導入する方にもおすすめです。
家庭教師事業の運営におすすめの機能として、月額プランが挙げられます。生徒が契約した月額プランによって、サブスクリプション制での自動課金が可能になります。予約管理者側・生徒側ともに、授業料に関する直接のやり取りが不要になるため、支払いにかかる手間が軽減します。
参考サイト:RESERVA公式サイト「家庭教師のための予約システム」
2.映像授業サービス

について紹介します。」
家庭教師のトライは、リモートで授業が受けられる「Try IT」という映像授業サービスの開発によりDXを実現しました。「Try IT」とは、2015年7月から開始された中学生・高校生向けの映像授業サービスで、現在では100万を超える人々が本サービスを利用しています。授業はpcまたはスマートフォンで配信されるため、生徒は場所を問わずに無料で充実した学習が可能です。
参考ページ:株式会社ペライチ「新サービス「トライイット(Try IT)」
について紹介します。」
参考ページ:家庭教師のトライ「東京都 利用者数100万人!永久0円の映像授業「TryIT 入試対策編」リリース!」
3.学習進捗管理ツール(オンライン学習サポート機能)

株式会社ファルボは、ラコモで「学習進捗管理ツール(オンライン学習サポート機能)」を開始しました。ラコモとは、図鑑シリーズ(中学図鑑・高校図鑑・塾図鑑・家庭教師図鑑)と、ラコモ.com(学習・成績管理や授業のサポート、連絡機能など)といったファルボが提供するサービスの総称です。
ラコモは、生徒が授業や宿題をいつどのような形で出席、提出したのかを記録し、それらを学習履歴上で方法・科目・単元別に表示します。また、授業や課題として行ってきた内容を成績一覧として公開するため、生徒・保護者・先生の三者間での確認が可能になります。このように、ラコモは理解度と成績を同時に見ることができるシステムのため、先生が通知表などを作成する際の基準が明確になります。これを導入することで、成績の明確化と学習内容の一元的な管理が可能です。
参考サイト:株式会社ファルボ「学習管理ツール」
参考サイト:ICT教育ニュース「ファルボ、学習支援AIプラットフォーム「ラコモ」の提供開始」
まとめ
今後の家庭教師業界は今より活発化していくことが予想されます。DX化を推進することによって学習や業務の効率化、生徒に寄り添ったサービスの提供が可能です。激化する受験に臨む生徒に対し、最適に講師がサポートするためにはDX化が欠かせません。