2019年12月から感染が拡大し、猛威を振るった新型コロナウイルスが落ち着き、国内外に旅行へ行く人が増えています。旅行・航空関連のデータを提供するOAGによると、2024年度に混雑した空港ランキングのグローバル部門では、東京都の羽田空港が世界3位にランクインしました。提供座席数は5,520万4,580席で、前年度と比べて5%の増加です。
日本を代表する航空会社である日本航空(JAL)と全日空(ANA)それぞれの2023年度国際線年間利用者数をみると、JALが662万8,180人でANAが713万4,828人でした。合計で約1,376万人が飛行機を利用して国外に旅立っています。
そのような状況で、空港や航空会社が提供するサービスの業務を効率化や、安全で快適なフライトの実現のためにDX(デジタルトランスフォーメーション)化が推進されています。DX化によって空港や航空会社を利用するお客さんの満足度向上や、職員の負担軽減につながります。
本記事では、航空業界でのDX活用をもとに、DX化の重要性と可能性を考えていきます。
航空業界におけるDXとは
まず、DXとは経済産業省の「デジタルガバナンス・コード2.0」で以下のように定義づけされています。
企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。
デジタル化によって業務の効率化や生産性の向上を図り、快適な社会環境へ変革していくことをDXといい、時代に沿った価値観やシステム、サービスを構築する目的があります。
例えば、予約システムの導入で「飛行機の不具合の予測をAIを用いて分析する」というのはDX化の例の1つで、「飛行機を点検する作業員の負担を軽減させること」や「安全で快適なフライトの実現」の実現につながります。このような業務の効率化は利用者満足度の向上やサービスクオリティの増進につながります。
年間、多くの人が利用する空港や飛行機は安全かつ快適であることが重要視されます。DX化による業務の効率化は安心安全で快適なフライトを可能にします。
航空業界におけるDX導入事例
ここからは航空業界のDX導入の例を紹介します。
1.予約システム
予約システムは予約受付→決済→顧客管理→集客まですべて自動化し、データ管理の効率化を可能にします。
「RESERVA(レゼルバ)」は導入数30万社を超える、業界トップシェアのクラウド型予約システムです。利用業態は350種類以上にのぼり、最短3分でサイトを作成できるシンプルな操作性が高く評価されています。無料のフリープランから利用でき、初めて予約システムを導入する方にもおすすめです。
毎月同じ金額を自動的に徴収できる月額プランや、オプションやスポット利用に使える回数券機能など、航空業界に役立つ機能を多数搭載しています。
例えば、空港内に設置されているラウンジの利用をRESERVAの回数券利用機能を用いることにより、顧客管理を円滑に行うことができ、業務の効率化が期待できます。
2.JALとNEC「南紀白浜IoTおもてなしサービス実証」
2020年から日本航空株式会社(JAL)は日本電気株式会社(NEC)と共同して、南紀白浜空港で「南紀白浜IoTおもてなしサービス実証」を開始しました。「南紀白浜IoTおもてなしサービス実証」とは、顔認証技術を活用し、新しい観光体験を提供する取り組みです。これにより、JALは待ち時間も楽しめる旅行体験の提供を、NECは生体認証データの活用による安全で先進的な旅行体験を提供します。
今までに「笑顔写真撮影サイネージ」「手荷物待ち時間可視化サイネージ」「羽田空港初の顔認証による手ぶら決済」の3つの取り組みを行いました。「笑顔撮影サイネージ」は搭乗待合室に設置されているディスプレイの前に立つとパンダのキャラクターと一緒に記念撮影ができるサービスです。笑顔を点数化して、その場でデータをスマートフォンなどに送ることが可能です。「手持ち時間可視化サイネージ」は顔認証システムにより、顔と手荷物を紐づけて、空港到着時に手荷物が出てくるまでの時間を可視化できます。待ち時間の可視化によって時間を有効活用できるため、非常に便利なサービスです。
参考サイト:NEC公式サイト「南紀白浜IoTおもてなしサービス実証」
参考サイト:NEC公式ホームページ「JALとNEC、デジタル技術を活用した新たな旅行体験の実現に向けて協業開始」
3.ANA「ストリーミングエンジン」
ANAグループのITサービスを提供するANAシステムズ株式会社と伊藤忠テクノソリューションズ株式会社が「ストリーミングエンジン」を共同開発しました。「ストリーミングエンジン」とは飛行機の予約から搭乗までのお客さんの行動と、飛行機の運行状況などのデータにもとづいて、一人ひとりに合ったサービスの提供や複数のサービスを連携するシステムです。
例えば、普段保安検査場を通過するのが遅いお客さんに向けて、搭乗45分前までに保安検査場を通過すると搭乗ゲート付近の店で使えるクーポンをメール配信することで、保安検査場を早く通過してもらえます。これにより、時間ぴったりのフライトが可能になり、顧客満足度の向上につながります。
参考サイト:伊藤忠テクノソリューションズ株式会社公式ホームページ
航空業界のDX化が進む未来
新型コロナウイルスの終息に伴い、飛行機を利用して日本国内に出張・旅行をする外国人が増加することが予想されます。国土交通省観光庁「訪日外国人旅行者数・出国日本人数の推移」を確認すると、2021年から2024年にかけて、訪日外国人旅行者数・出国日本人数ともに急増しています。今後も増えていくことが予想されるため、航空業界の需要が高まります。
需要の拡大に対応するためには、適切にDX化を進めることが重要です。業務効率化や人件費削減を目的としたDX化は、コストや費用対効果を考慮したうえで導入を進めなければ、生産性や利益の低下等が懸念されます。そのため、段階を踏んでDX化を進めていかなければなりません。そこで、まずはかんたんに運用が可能な予約システムの導入から始めるなど、DX化を着実に進めることが重要です。
まとめ
今後の航空業界は今より活発化していくことが予想されます。DX化を推進することによってミスの少ない安全なフライトや、お客さんに寄り添ったサービスの提供が可能です。世界に誇れるような航空業界にするためにはDX化が欠かせません。