保育業界のDX化|デジタル技術の活用で保育の質を向上

保育業界のDX化|デジタル技術の活用で保育の質を向上

総合情報サービス企業である帝国データバンクは2026年9月、公式サイトにおいて、『「保育園」の倒産・休廃業解散動向(2026年1-8月)』を公表しました。それによると、2026年の1月から8月までに発生した保育園運営事業者の倒産や休廃業、解散件数は36件に達し、前年同期の27件を上回りました。

保育園が倒産する原因としては、保育士の確保難や給食に使用する食材価格の高騰による経営費の圧迫などが挙げられます。特に人材不足は深刻化しており、2026年1月にこども家庭庁が発表した保育士の有効求人倍率の推移(全国)では、保育士の求人倍率が全職種平均である1.27倍をはるかに上回る3.88倍であることが明らかになりました。

人手不足が進む保育業界における現状を打破するために重要なカギを握るのが、デジタルトランスフォーメーション(以下、DX)です。経済産業省「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX 推進ガイドライン)」では、DXを以下のように定義づけしています。

「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」

保育所の倒産が相次ぐ現状に歯止めをかけ、保育士が働きやすい環境を作るためにはDX化の推進が欠かせません。一例として、AIの活用が保育士の業務削減に貢献することが挙げられます。

そこで本記事では、保育業界のDX化に着目し、現状の課題や導入によるメリット・デメリット、そして実際の導入成功事例を紹介しながら解説します。

保育業界のDX化における課題

深刻な人手不足に陥っている保育業界では、以下のような理由からDX化が依然として停滞しています。

1.厳しい経営状況

保育所のDX化を推進するには、最新のデジタルツールやシステムを導入するためのハードウェアやソフトウェアの購入が必要です。しかし、現在の保育所の多くは少子化による園児数の減少から厳しい経営状況を強いられています。そのため、保育所にはDX化に必要な初期費用にコストをかけられるほどの余裕がありません。

2.増加する保育士の業務量

新たなシステムの導入には、費用だけでなく、時間的な負担もともないます。保育士の減少によって1人あたりの業務量が増加しているなか、マニュアルの作成や全体説明会を実施する場合は、業務の負担が大きくなります。

3.重要視される対面コミュニケーション

保育士が保護者との信頼関係を築くには、対面でのコミュニケーションが欠かせません。厚生労働省が発表した「保育所等における在園児の保護者への子育て支援」によると、保護者は子どもの送迎時に保育士とその日の様子を共有することで、安心感や信頼感を抱くようになります。そのため、対面でのコミュニケーションの機会が減少し、子どもの情報共有がオンラインのみで完結することに抵抗を感じる保護者も少なくありません。

保育業界がDX化するメリットとデメリット

保育所におけるDX化には大きな可能性がある一方で、懸念点も存在します。そのため、メリットとデメリットの両面を理解し、適切に実施することが重要です。

メリット

1.書類管理の簡易化

保護者向けのお知らせを作成した際、プリントの配布ではなくオンライン上に掲載することで、紙の書類を管理する必要がなくなるため、事務作業の削減につながります。保護者会に参加できなかった保護者もお知らせの確認がかんたんになり、プリントを紛失する心配もなくなります。

2.記録や連絡などの効率化

園児の記録や保護者への連絡をオンライン上で完結させることで、保育士は手書き業務や電話連絡などにかかる時間の削減が可能です。保護者も対応に時間を取られることなく、仕事や家事などに専念できます。

3.情報共有の迅速化

デジタルツールを用いて保育士間や保護者との情報共有をリアルタイムで行うことで、電話での個別連絡や集会を開くなどの対応が不要になります。常に新鮮な情報を得られるため、緊急事態が発生した際でも認識のすれ違いを防ぐことができます。

デメリット

1.システム導入時の費用 

保育所のDX化を図る際、まず費用面の負担が大きいことが挙げられます。インターネットを利用するための高速ネットワーク環境の構築をはじめ、個人情報管理に必要なツールやシステムなどの準備が必要になり、多額の費用が発生する傾向にあります。

2.データセキュリティの懸念 

DX化を進めるうえで、園児や保護者の個人情報をデータで管理するため、セキュリティ対策を強化する必要があります。特に保育業界は、親子の家庭に関する記録なども扱うため、厳重な管理体制が求められます。ずさんな管理を行うと、保育所に対する不信感が募り、信用を大きく損ねる恐れがあります。

3.デジタルに不慣れな保育士・保護者の心理的抵抗

デジタルツールに慣れていない保育士や保護者は、DX化に抵抗感を示す可能性があります。また、従来のやり方を変更する際は、新たにマニュアルの作成・配布、説明の時間をとる必要があり、一時的に保育士の業務量が増加する場合もあります。

保育業界におけるDX導入事例

保育業界におけるDX推進には、デメリットもある一方、多くのメリットが期待できます。なかでも、以下の3つの取り組みは、人手不足への対策として特に有効です。

1.予約システム

画像引用元:RESERVA公式サイト「認定こども園のための予約システム

予約システムは予約受付から決済、顧客管理、集客までをすべて自動化し、データ管理の効率化を実現します。業界トップシェアを誇るクラウド型予約システム「RESERVA(レゼルバ)」は、350業種以上に対応しており、その使いやすさから35万社を超える企業に導入されています。無料のフリープランから利用でき、初めて予約システムを導入する方にもおすすめです。

保育所の運営におすすめの機能として、保護者会や説明会などの際に保護者自身で登園処理ができる機能や、一時預かりの際に事前オンラインカード決済ができるレゼルバペイメントなどが挙げられます。これらによって、保護者の利便性向上と保育士の入園相談対応などにかかわる煩雑な業務の改善が実現します。

参考サイト:RESERVA公式サイト「認定こども園のための予約システム

2.保育ICTシステム

画像引用元:株式会社コドモン「トップページ

月謝支払いの管理や園児の記録など、保育士の業務は多岐にわたります。それらの事務作業を一元化できるのが、保育ICT(情報通信技術)です。株式会社コドモンのシステムの場合、登降園や請求書の管理、保護者への連絡などの業務において、紙媒体への転記や電話での個別連絡といった時間のかかる作業を削減できます。

また、同システムは保育士だけでなく栄養士の業務にも活用可能です。園児のアレルギー情報や登園状況を連携することで、アレルギー対応メニューの作成や給食の食数調整など、献立管理に関する業務もひとつのシステムで完結します。

参考資料:株式会社コドモン「機能一覧

3.園内見守りカメラ

画像引用元:キヤノンマーケティングジャパングループ「トップページ

保育士の人手が不足している保育園において、大きな課題となるのが園児の見守り体制です。事故が起こった際、保育士が現場を見ていないと前後の状況を説明できないため、保護者が不安を感じる可能性があります。

キヤノン株式会社の「見守りカメラ」を導入しておくと、園児の様子を映像で継続的に確認できるようになり、保育士が把握できる情報の範囲を広げられます。また、保育士自身が保育の様子を映像で振り返ることで、保育の質向上にもつながります。

参考サイト:キヤノンマーケティングジャパングループ「見守りカメラで園利用者にも従業員にも安心感を与え、双方の満足度が向上

まとめ

日本の保育士不足は深刻であり、今後も保育士の確保が難しい状況が続くことが予想されます。そのような状況下で、保育施設が予約システムや保育ICT、見守りカメラなどを導入し、現場の業務負担を軽減することで、人材不足への対応を進めやすくなります。さらに、業務効率化によって保育士が園児と向き合う時間を確保しやすくなり、保育の質の向上にもつながります。こうした人材不足や保育の質に関する課題の解決に向けて、保育業界では今後もDX推進が求められています。