総務省が発表した「令和3年情報通信白書」によると、2020年日本のデジタル競争力は、27位で前年と比べ4位下がり、同じアジア圏でも年々デジタル競争力を高めている香港や韓国と比べて、低下傾向です。その要因として、「ICT投資の低迷」「人材の不足・偏在」「不安感・抵抗感」「デジタルリテラシーが不十分」などが挙げられ、様々な要因が絡み合い、DX(デジタルトランスフォーメーション)化の後れが生じています。
しかしこのままDX化が遅れることは、経営負担やランニングコストの増大、人材不足などあらゆる問題を引き起こし、DXを導入している企業や他国との大きな差につながります。
特に飲食業界は、コロナ禍を経て、DX化の波が激しく押し寄せており、デジタル化による注文の容易さや提供の迅速化が不可欠です。しかし、飲食業界の要である「おもてなし」の精神が、デジタルとかけ離れているように感じ、業界のDX導入を拒まれるケースがあります。DX化が進む現代、デジタルとおもてなしは両立は、業界の隆盛や顧客の満足度を高めるための最も大きな課題の1つです。
本記事では、なぜ飲食業界にDXを導入するべきか、活用例を挙げながら、業界の今後について探っていきます。
飲食業界におけるDXとは
まず、DXとは経済産業省の「デジタルガバナンス・コード2.0」で以下のように定義づけされています。
企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。
デジタル化によって、利便で快適な社会や業務の効率化を目指し、より良い生活や労働環境へ変革することをDXといい、デジタル技術の導入は生産性の向上、クオリティの高いサービスなどの強みとなり、競争上で優位になることが期待できます。
例えば、予約システムを導入して「テイクアウトの予約・決済・顧客情報をデジタル化し、一元化して管理する」ことはDX化の例の1つです。これにより「時間を問わない予約受付」や「業務負担の軽減による人件費の削減」が実現可能になり、顧客満足度の向上やサービスクオリティの増進につながります。
DX化の導入は、利便性の向上だけでなく、データ収集による需要の把握やスタッフの労働管理を可能にします。これはおもてなしを重視した日本の飲食業界の接客において、業務の効率化や快適な労働環境を実現する重要な変革です。スタッフも利用者も快適な環境づくりは、今後の飲食業界で必須となるでしょう。
飲食業界におけるDX導入例
ここからは飲食業界のDX化において有用なサービスを紹介します。
1.予約システム
予約システムは予約受付→決済→顧客管理→集客まですべて自動化し、データ管理の効率化を可能にします。
「RESERVA(レゼルバ)」は350種以上の業種に対応しており、フリープランを含む6種類のプランを用途やニーズにあわせて選択できる、業界No.1の実績を誇っています。初心者でもかんたんにテイクアウトの予約システムを構築でき、インターネットで24時間テイクアウト予約の受付が可能です。顧客が予約日時を忘れないように促す予約リマインドメール機能や、顧客に向けて定期的にメールを配信するメルマガ配信機能で、顧客の再来店の促進や幅広い年齢層の顧客獲得が期待できます。
2.配膳ロボット
配膳ロボットは、スタッフに代わりロボットのトレーに商品を載せて、自動で顧客の席まで運ぶことを可能にします。
PUDU ROBOTICS(プードゥ ロボティクス)のネコ型配膳ロボット「BellaBot(ベラボット)」は席の案内、正確な配膳、マルチマシン連携など機能面だけでなく、かわいらしい外観やAI音声機能などクオリティの高い接客を可能にしています。無指向性3D障害物回避機能は、障害物に遭遇すると、任意の角度で停止して離れる機能で安全性に特化しています。
2022年12月には株式会社すかいらーくレストランツの約2100店舗に、3000台の配膳ロボットを導入し、配膳の効率化とともにスタッフの負担軽減を実現しています。
3.モバイルオーダー
モバイルオーダーは、アプリケーションやウェブページから事前に注文をして、スムーズに商品やサービスを提供できるようにするシステムです。待ち時間を大幅に短縮でき、混雑緩和と同時に、生産性の向上を可能にします。
「Okage DX Pratform(オカゲ ディーエックス プラットフォーム)」のモバイルオーダーシステムは、飲食店に特化しており、店外・店内、前払い・セルフレジ・有人レジなど各店舗のニーズにあわせた組み合わせで導入できます。店内モバイルオーダーでは、ワンタイムQRコード機能で利用者がスマートフォンのカメラで読み込むだけで注文ができ、アプリなどのダウンロードが不要なので、利用者にも手間をかけません。
オーダーを取る手間が省け、効率の良い商品の提供ができることから、居酒屋や売店、ホテルレストランなど幅広く利用されています。
飲食業界が進んでいく未来
経済産業省の調べによると、飲食店のキャッシュレス決済導入状況は、小売業、観光業に次ぐ85.4%を誇り、キャッシュレス化が進んでいます。飲食業界は、紹介した導入例以外にも、非対面のデリバリーサービスや店舗予約のグルメ情報サイトなど、DX化が他業界よりも先進的に導入されており、今後も市場の拡大が示唆されます。
DX化の推進度は業界の盛衰に大きく影響しており、DXを導入しやすい業界こそ、導入の可否の差が歴然になります。また、DXに取り組みやすい業界の発展が日本全体のデジタル競争力向上につながります。
おもてなしの接客が重視される飲食業界こそ、DX化による業務の効率化や労働環境の改善、利用の容易化が業界を生き残る要因となることは明らかです。
まとめ
飲食業界は、接客と利便性の両方が重要とされている業界のため、多くの企業がDX化を推進しています。DX化による恩恵を受けやすいからこそ、サービスクオリティや満足度に還元できる、デジタルに向いた業界です。今後、日本におけるDX化の進展は、飲食業界の隆盛が鍵になるでしょう。