デジタル庁創設の意義とは?今後日本はどのような変化を遂げるのか

デジタル庁創設の意義とは?今後日本はどのような変化を遂げるのか

新型コロナウイルスの拡大に伴い、より一層デジタル化の重要性を感じるようになりました。特に日本のデジタル化は、世界の最先端よりも2年ほど遅れをとっているとも言われています。(参照:日本企業のデジタル化は世界より約2年の後れ–ガートナー調査
日本政府のデジタル化・DX化への対応が、今後の日本の成長に大きな影響を与えてくることは間違いありません。

そんな中で政府は、2021年9月1日にデジタル庁を創設しました。デジタル監には石倉洋子氏、デジタル大臣には、牧島かれん氏が任命されています。

デジタル庁では今後の取り組みとして、主に

・行政のデジタル化
・規制改革
・公務員のデジタル職採用
・マイナンバーカードの普及・促進
・教育のデジタル化
・デジタル格差の解消に向けた活用支援
・テレワークの促進

などを挙げています。これらの目標を掲げるデジタル庁の創設によって、国全体のデジタル化の底上げをしていく狙いがあります。

日本のデジタル化への取り組み

画像引用元:内閣府公式サイトより

以前より日本政府は、インターネットやスマートフォンなどが普及している状態を情報社会(Society4.0)として、さらに先の段階である情報の分析・活用方法までを可能としたSociety5.0を目指してきました。サイバー空間とフィジカル空間を融合させるための取り組みでもあるSociety 5.0の目標には、

・IoTによって人とモノがつながる社会
・イノベーションによる高齢者の住みやすい世界
・AIによる必要な情報がいきわたる世界
・ロボットの活用により人の可能性を広げる世界

などがあります。これにより自治体でのIoTが促進され、テレワーク施設の整備も盛んに実施されています。多様な働き方を進めるにあたって、重要な一歩目を踏み出しています。

しかし、現在目標としているデジタル社会に達しているわけではありません。介護・看護業界など数多くの業界で課題を抱えています。こうした社会問題をデジタルを利用して解決すべく、政府として先進的な取り組みをより強化していくためにデジタル庁を創設する経緯となりました。

デジタル監・石倉洋子氏の経歴

2021年9月にデジタル監に石倉洋子氏が任命されました。石倉氏のかんたんな経歴は下記のとおりです。

1971年上智大学外国語学部卒業
1980年バージニア大学大学院経営学修士取得(MBA)
1985年ハーバード・ビジネス・スクール経営学博士取得
1985年マッキンゼー日本支社に入社
2004年ボーダフォンホールディングス株式会社社外取締役
2006年商船三井社外取締役
2010年日清食品ホールディングス社外取締役、富士通社外取締役
2011年慶応義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授
2012年一橋大学名誉教授
2015年資生堂社外取締役
2021年デジタル監

石倉氏は、ハーバード・ビジネス・スクール経営学博士号を取得しており、商船三井、富士通などの日本有数の大企業の社外取締役を務めた経験をもっています。経営学などで培った知恵をデジタル庁でも大いに生かされるとして任命されました。専門性はないものの、デジタルの良さを理解しており、自身でもプログラミングなどに挑戦する貪欲な姿勢を見せています。

デジタル大臣・牧島かれん氏の経歴

2021年9月に創設されたデジタル庁の大臣に2021年10月、牧島かれん氏が任命されました。牧島氏のかんたんな経歴は下記のとおりです。

2000年国際基督教大学 教養学部 社会科学科を卒業
2001年米国ジョージワシントン大学ポリティカル・マネージメント大学院修了(修士号取得)
帰国後、キャスターや新聞の連載などで活躍
2008年国際基督教大学大学院行政学研究科博士後期課程修了(学術博士号取得)
2009年衆議院選挙に出馬するが、落選
2012年衆議院選挙で初当選
2015年内閣府大臣政務官
2016年熊本地震の現地対策本部長として対応
2017年衆議院選挙3期目の当選
2020年菅自民党総裁から女性初の自由民主党青年局長となる
2021年デジタル大臣任命

牧島氏は、自民党政務調査会のデジタル社会推進特別委員会で事務局の経験があり、デジタルへの豊富な知識を持っています。デジタル社会推進本部では、新内閣で幹事長候補の甘利氏のもとで、海外のデジタル化の事例や状況を視野に活躍していました。デジタル庁の創設にも尽力を尽くしていた1人であり、その点を踏まえてデジタル大臣に任命されています。

今後のデジタル庁の取り組み

デジタル社会の司令塔として、日本社会のデジタル化を実現させていくために、未来志向のDX(デジタル・トランスフォーメーション)を推進し、今後5年でデジタル社会に必要なインフラを整えることを目標としています。

行政のデジタル化

全国の自治体のシステムの統一化、標準化を2025年末までに達成するために「ガバメントクラウド」の活用を目指す方針です。(参考:デジタル庁のガバメントクラウド概要

「ガバメントクラウド」は、ネットワーク経由でソフトウェアなどを管理するクラウドを利用して、地方自治体の業務システムを統一化していくことです。メリットとしては、

業務の柔軟性
コストの削減

などが挙げられます。地方自治体の業務システムは、管理費が高額、柔軟な対応ができない欠点がありました。その点、クラウドを導入して変化などに対応しやすくなると業務の効率化にもつながります。

また、行政手続きにおいて政府・自治体の法人向けオンライン申請である「GビズID」という仕組みを作成します。(参考:GビズID公式サイト

GビズIDでは、補助金申請、社会保険手続きなどの対応した手続きでの本人確認書類の提出が不要となります。

規制改革

IT技術の活用などの規制を改革していくことが目的です。日々進化していくデジタル化、イノベーションによって経済成長を加速させていくためには、従来の規制内容では取り入れられるまでに時間がかかってしまいます。(参考:内閣府の規制改革実施計画

医療・介護・教育などのいち早くデジタル技術を必要とされている分野を含め、さまざまな分野でのデジタル化を進めていき、経済成長、国民の生産性、効率化などを向上させていく必要があります。

公務員のデジタル職採用      

今後のデジタル化において司令塔であるデジタル庁を含む政府部門の中で、デジタルに精通した人材を採用していきます。情報系の学生や人材を以前より大規模に確保していくために、2020年から、国家公務員採用総合職試験にデジタル区分を作る予定です。(参照:デジタル区分の新設等について

マイナンバーカードの普及・促進

マイナンバーカードを利用して行政サービスの向上、教育や医療分野でのデジタル化を目指していきます。現在、マイナンバーカードは医療機関などで利用されており、今後は、災害時の給付金自動支給などが行えるようになっていきます。緊急時などでの国民の管理システムとしてマイナンバーを利用していく考えです。

画像引用元:総務省公式サイトより

教育のデジタル化

2021年4月よりGIGAスクールがスタートしています。GIGAスクールとは、全国の小中学校で1人1台端末が支給され勉強していくことです。すべての子どもたちが個別最適な学びをICT端末を利用して進めることを支援していきます。

デジタル格差の解消に向けた活用支援

デジタル化を進めていくにあたって問題となってくるのがデジタル格差です。

政府では、「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化」をテーマに、高齢者やIT知識が不足している人でもデジタルを活用できるような社会を目指しています。

このためデジタル庁では、高齢者などに向けたデジタル機器やサービスの利用方法などの講習会を開催していきます。

画像引用元:デジタル支援事業公式サイトより

テレワークの促進

現在でも、新型コロナウイルス感染の拡大に伴って、企業ではテレワークの導入が促進されています。このような流れを後押しして、新しい働き方を実現させていきたい考えです。

そのため、中小企業などを対象にしたセミナー・イベントや、テレワーク導入に関する相談事業、導入時にかかる費用の助成金の案内などを積極的に実施し、デジタル化によって可能となった新しい働き方を目指します。

画像引用元:テレワーク総合ポータルサイトより

まとめ

日本では、以前より本格的にデジタル化、DX化の促進を目指してきました。その一方で、デジタル化導入の一般化は、規制などの障壁によりなかなか進んでいないのが現状でした。その中で、新型コロナウイルス感染拡大を機に、デジタル化を進めることの重要性が一気に高まったのも事実です。ワクチン接種予約にはじまり、施設などの予約システムでもデジタル化の需要が増加してきています。今回のデジタル庁創設により、さらなる国内のデジタル化への動きが高まっていくことが期待されるでしょう。

*2021年10月10日(日)・11日(月)は、初のデジタルの日として制定されました。デジタル庁では、2021年10月10日(日)13時よりYouTube、Twitterの生配信にて、Online Eventを実施する予定です。

デジタル庁のYouTubeチャンネル:
https://www.youtube.com/watch?v=2hL9h85Ei6I
デジタル庁のTwitterアカウント:https://twitter.com/i/broadcasts/1nAKEYOYONRKL