介護業界のDX化|最新デジタル技術を取り入れた福祉サービス

介護業界のDX化|最新デジタル技術を取り入れた福祉サービス

厚生労働省の「介護人材の処遇改善等(介護人材の確保と介護現場の生産性の向上)」によると、介護サービス事業所における訪問介護員と介護職員の人手不足感は、令和4年度で上昇していることが明らかになりました。離職率は改善傾向にあるものの、約9割の事業所が人材不足を理由として、採用が困難であることを挙げています。

2024年度から2040年度にかけて、約47万人が新たな介護職員として必要になる見込みであり、早急な人材確保が求められています。介護業界の人材不足は、高齢化が進む日本社会にとって大きな課題であり、介護職員の処遇改善をはじめとする、総合的な介護人材確保の対策に取り組む必要があります。

そのような状況で、介護事業所や自治体におけるICT等を活用して業務を効率化する、DX(デジタルトランスフォーメーション)化が推進されています。DX化によって、限りある資源の有効活用と、質の高い効率的な介護サービス提供体制の確保が見込まれます。

本記事では、介護業界でのDX活用をもとに、DX化の重要性と可能性を考えていきます。

介護業界におけるDXとは

まず、DXとは経済産業省の「デジタルガバナンス・コード2.0」で以下のように定義づけされています。

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。

デジタル化によって業務の効率化や生産性の向上を図り、人々の生活をよりよいものへと変革していくことをDXといい、時代にあわせた価値観や快適な社会環境を形成する目的があります。

例えば、予約システムを導入して「診療の予約・決済・顧客情報をデジタル化し、一元化して管理する」ことはDX化の例の1つです。これにより「時間を問わない予約受付」や「業務負担の軽減による人件費の削減」が実現可能になり、利用者満足度の向上やサービスクオリティの増進につながります。

DX化の導入は、利便性の向上だけでなく、データ収集による需要の把握スタッフの労働管理を可能にします。人材不足が大きな課題である介護業界において、業務の効率化労働環境の改善を実現する重要な変革であり、スタッフも利用者も快適に過ごせる環境づくりを実現できます。

介護業界におけるDX導入事例

ここからは介護業界のDX導入の例を紹介します。

1.予約システム

予約システムは予約受付→決済→顧客管理→集客まですべて自動化し、データ管理の効率化を可能にします。

RESERVA(レゼルバ)」は業界トップシェアを誇るクラウド型予約システムで、導入数は30万社を超えています。350種類以上の業種に対応しており、無料のフリープランから気軽に始められます。初期設定から利用開始まで最短3分というシンプルな操作性が高く評価されています。

すでに予約が入っている時間帯にキャンセルが生じた際、キャンセル待ちをしている利用者に自動で通知できるキャンセル待ち機能や、サービスの予約と予約の間に準備時間を設定できる準備時間設定機能など、介護施設向けの機能が多数搭載されています。

2.介護ロボット

厚生労働省は、利用者の自立支援と介護者の負担軽減を目的とした介護機器を介護ロボットと呼んでいます。介護ロボットとは、情報を感知・判断し動作する、ロボット技術が用いられた介護機器です。

装着型パワーアシストや歩行アシストカートでの移動支援、自動排せつ処理装置での排泄支援、認知症の方の安全を確保する見守りセンサーなど、介護の現場でロボットの技術が応用されています。

3.シフト作成ツール

CWS for Care」は、介護業界ならではの制度やルールに対応した、介護専門のシフト・勤怠管理サービスです。過去に入力したシフト情報をAIが学習し、シフト案を自動作成します。シフトと出退勤の情報を照合することで、シフトの予定情報と勤怠の実績値の差異をかんたんに確認できます。

また、AIによってデータ化されたシフト情報を用いて、勤務形態の一覧表を自動で作成できます。厚生労働省が提供する標準のフォーマットで一覧表を出力できるため、転記の手間を削減でき、記入漏れなどのミス防止につながります。

介護業界のDX化が進む未来

介護労働安定センターの「令和3年度介護労働実態調査」によると、介護ロボットの導入や利用の課題として、「導入コストが高い」が 57.1%と最も高くなっています。「設置や保管等に場所をとられてしまう」「誤作動の不安がある」「技術的に使いこなせるか心配である」という回答も得られ、DX化による業務の効率化や職員の負担軽減への期待はありながらも、導入のハードルは高いのが現状です。

全国老人福祉施設協議会は、介護業界へのDXの導入について、介護ロボット・ICTを適切に使いこなすための業務改善とセットで取り組むことで初めて、生産性向上が図られると指摘しています。介護ロボット・ICTを利用する介護職員一人ひとりが、DX化への取り組みの理念を理解・共有し、介護業界全体の意識を変えていくことが重要です。

まとめ

介護業界では、現在の限られた人材で介護サービスを維持し発展させ、介護の質を向上するためのDX化を推進しています。DX化によって職員の負担軽減や業務の効率化が実現し、介護業界は大きく変化しています。介護業界のDX化は、日本社会の福祉サービス全体の発展につながるでしょう。