美術館・博物館のDX化|変わる時代に変わらない感動を

美術館・博物館のDX化|変わる時代に変わらない感動を

新型コロナウイルス感染拡大により、美術館や博物館は、入場制限や休業を余儀なくされ、これをきっかけに美術館や博物館の運営において、DX(デジタルトランスフォーメーション)化の必要性が浮き彫りになりました。美術館・博物館とDXは一見、遠く離れたものに感じますが、実際には文化芸術を守る重要な役割を果たします。

文化庁は「博物館DXの推進に関する基本的な考え方」にて、「ほぼあらゆる分野でDXに係る重要度の認識や投資が諸外国と比べて不足している」、「特に博物館分野は効率的な資料の管理・保存や多様な鑑賞体験の提供が進んでいない」といった現状と課題を述べています。

美術や博物学は、自ら触れようとしなければ学べないことが多く、特にコロナ禍では触れる機会が大幅に減少しました。誰もが気軽に美術や博物学に触れられる機会を増やすことは、コロナ禍以前からの文化芸術界の課題でした。文化や芸術の振興を図るには、現代社会の進化と同様の技術が必要です。美術館・博物館資料のデジタル化は確実な保管・保護だけでなく、業務の効率化につながります。

本記事では、美術館・博物館におけるDX化の必要性と有用性、またDX化による新たな可能性について実例とともに考えていきます。

美術館・博物館におけるDXとは

まずDXとは、経済産業省の「デジタルガバナンス・コード2.0」で以下のように定義づけされています。

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。

デジタル化によって業務の効率化やQOL(クオリティオブライフ)の向上を目指し、より良い社会や生活へ変革していくことをDXといい、時代や環境にあった価値観やシステムを形成するという目的があります。

例えば、予約システムの導入で「鑑賞チケットの予約・決済・顧客情報をデジタル化し、一元化して管理する」のはDX化の例の1つです。これにより「会計業務の負担軽減」や「顧客情報の管理ミスの削減」などあらゆる面で業務が効率的になり、それに伴う「サービスクオリティの向上」で集客率の増加につながります。

DX導入により、業務が効率化し顧客データを管理することで、トラブル回避やリピーターの増員を目指すことが可能です。また、オンラインやVR(バーチャルリアリティ)における作品の展開は、新規顧客の勧誘や作品保護に大きく尽力します。DX化で、新しい美術館・博物館のありかたが考えられています。

美術館・博物館におけるDX導入例

ここからは美術館や博物館のDX導入の例を紹介します。

1.予約システム

美術館の入館受付のための予約システム

予約システムは予約受付→決済→顧客管理→集客まですべて自動化し、データ管理を効率化が可能になります。

RESERVA(レゼルバ)」は350種以上の業種に対応しており、フリープランを含む6種類のプランを用途やニーズにあわせて選択できる、業界No.1の実績を誇っています。オンラインカード決済機能の事前支払いによる会計業務の負担軽減や、音声ガイドや貸し出し用車いすなどの備品予約機能によるリソース管理で効率的な運営が可能です。

2.ミュージアムDX

ミュージアムDX」は株式会社サビアが手掛ける、美術館・博物館の所蔵品や展示スペースなどをデジタル化してインターネットで配信する、デジタルミュージアムの構築支援サービスです。

あらゆる作品や展示空間に最適な方法で撮影し、高精細画像の保存・配信・表示をインターネットブラウザ上で可能にするクラウドサービスの展開で、ウェブ制作において高品質のサービスを提供しています。また、美術品の展示空間をVR(バーチャルリアリティ)撮影し、写っている作品の画像や映像をウェブページ化して展示室と作品の再現でき、それぞれの作品に高精細画像や映像を出して詳細な鑑賞が可能になります。

3.デジタルコンテンツ

世田谷美術館では、オンライン講座やイベント、展示作品の映像紹介、音声で楽しむポッドキャストなど、マルチメディアのデジタルコンテンツを展開しており、時間や場所、年代を問わない美術鑑賞を可能にしています。

世田美チャンネルは、インタビューや展示作品の紹介で、特別な知識がなくても美術というコンテンツを楽しめる仕組みを実現しており、新規顧客の獲得が可能です。

美術館・博物館DX化が進む未来

みずほ総合研究所株式会社の調査によると、デジタル技術を活用した取組を実施する上での課題として「予算の不足」や「人員の不足」、「知識・ノウハウの不足」、「必要な設備・環境が整っていない」などの理由がそれぞれ50%を越えました。一方で「必要性を感じない」という理由は10.7%と、必要性を感じながらもデジタル技術に取り組めないといった状況であることがわかりました。

つまり、DX化が必要であることは前提として、どのように導入していくかが今後の課題になっていきます。デジタル化は企業にとどまらず、ミューゼオ株式会社の「Muuseo My Museum(ミューゼオマイミュージアム)」はアートや文化のファン創出や継続的なコミュニケーションを目指しており、利用者のコレクションをデータとして登録し、個人的なデジタル博物館の作成を可能にしています。作品をデジタルとして保存し多くの人と共有することは、文化芸術の発展につながります。

DXを導入した美術館・博物館の業務効率鑑賞体験機会の豊富さから、業界全体でDX化の促進をする必要があります。

まとめ

美術館や博物館のありかたは、DX化をきっかけに大きく変化しています。文化芸術との新しい接触の幅は常にひろがり、その価値観が当たり前になる未来はそう遠くありません。作品を守るDX化が業界全体の発展につながるでしょう。