労務管理システムとは、従業員の個人情報をデータ化し、年末調整・社会保険などの労務に関する手続きを管理・代行するシステムです。労務管理システムを活用することで、従業員情報だけでなく、扶養家族や社会保険の加入状況などを一元管理できます。
最近では、手続きフローの明確化、進捗確認の円滑化を推進するべく、多くの企業が労務管理システムを導入し始めています。
本記事では、労務管理システムの選び方や、おすすめシステムを紹介していきます。自社の目的に沿ったシステムを導入するための参考にしてください。
労務管理を怠るリスク
一言で労務と言っても、そこには様々な意味があり、入社・退社手続から残業代申請、給与明細発行など、企業運営・労働に関わる関連業務全般を指します。
企業が労務管理を怠ると、業務の生産性が低下するだけでなく、賠償金請求に発展し、企業が存続の危機に立たされるリスクもあります。
具体的にどのような問題が発生するのか見ていきましょう。
・残業代未払い
・労働基準法に抵触
・情報漏洩
勤怠管理も労務の1つです。日本は、欧米諸国と比較して労働時間が長いと言われています。近年では企業の働き方改革が推進され、労働時間に関する問題も改善されつつありますが、いまだサービス残業や長時間労働などの、労働環境における諸問題が散見されることが実態です。
サービス残業は労働基準法によって制限されているため、企業は、従業員が残業した場合、労働時間に見合った賃金を支払わなくてはいけません。しかし勤怠管理が煩雑であることで、従業員の労働時間やサービス残業有無などの勤務実態が不透明になり、正当な賃金の支払いができない可能性があるのです。
例えば派遣会社の場合、従業員は派遣先での勤怠打刻をタイムカードで行い、派遣元企業は、派遣先企業からの申請に基づき従業員の勤怠管理を行っているケースがあります。
この場合、派遣元企業は従業員の勤怠をリアルタイムで確認できないため、実労働時間と申請された労働時間に差異が生じ、残業代の未払いや過払いが発生する可能性があるのです。仮に残業代を支払わなかった場合、労働基準法第37条に抵触し、 6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます。
また、企業は膨大な従業員の個人情報を所有しているため、情報漏洩があった場合の損失は甚大です。万が一損害賠償に発展すれば、社会的信用が失墜することは言うまでもありません。
上記のようなリスクを最小限に抑えるには、従業員の勤怠状況や、個人情報を強固なセキュリティ体制のもとで一元管理できる労務管理システムが重宝されます。
労務管理システムの選ぶ方
ここでは、労務管理システムの選び方について解説します。
・システムのタイプを確認
・対応可能な業務範囲を確認
・その他システムと連帯可能か確認
システムのタイプや業務可能な範囲が異なるので、社内でどのような業務を効率化するべきか明確化したうえで、複数のシステムを比較検討することがおすすめです。
システムのタイプで選択
労務管理システムには大きく分けて2つのタイプが存在します。
・クラウド型
・インストール型
現時点では、クラウド型サービスを導入する企業が圧倒的に多いです。
クラウド型の労務管理システムを使用する場合、特定のデバイスは必要なく、インターネット環境さえあれば、どこにいてもサービスを使用できます。そのため、テレワークなどオフィスに囚われない働き方を推進している企業には最適です。
また、アップデートが自動的に行われるため、常に最新状態を維持できます。そほか、自動バックアップ機能など、各種便利機能が豊富な点もクラウド型の優位点です。
インストール型は、自身で購入手続きやアップデートを行う必要があり、費用に関してもクラウド型に比べて高額になるケースが多いです。一方、自社サーバーでシステム構築が可能なため、セキュリティ対策には適しています。
労務管理システムに投資するコストや、必要な機能を明確にし、自社に最適なシステムを導入しましょう。
対応可能な業務範囲を確認
自社の目的に沿ったシステムを導入するには、対応可能な業務範囲を把握しておくことが重要です。労務管理システムで可能な業務としては、主に以下のようなものが挙げられます。
・従業員の入社や退社に関する手続き
・社会保険、福利厚生の加入管理
・従業員の給与管理
・年末調整などの事務手続き
・雇用契約書の作成、締結
主に上記の業務を労務管理システムによって代行できますが、システムによって対応可能な範囲が異なります。
対応可能な範囲が広く、機能が豊富なシステムが自社にとって最適であるかと言えば、必ずしもそうとは限りません。機能の多さ故に管理画面が複雑化し、業務フローの整理が困難になるケースも考えられます。
確定申告や資格取得などの申請業務の効率化を望むのであれば、電子申請に対応していることが理想的ですが、社員情報や給与管理のみを自動化したいのであれば、勤怠管理に特化したシステムを選択することも有効的です。
労務管理システムを導入する前に、効率化したい業務内容を明確化しておくことが重要になります。
その他のシステムと連帯可能か確認
業務の効率化・自動化が推進され、既に給与・勤怠管理システムを導入している企業も少なくないです。
新たに労務管理システムを追加導入する場合、導入済みのシステムと連帯が可能であれば、システムを同期させ情報を一元管理できます。
システム連帯が不可能である場合は、既存のシステムを解約するか、別システムの導入が必要になる可能性もあるため、連帯機能の有無は、システム導入にあたり非常に重要な要素です。
サポート体制をチェック
徹底したセキュリティ対策をしている労務管理システムでも、トラブルが発生するリスクを想定しておく必要があります。
予期せぬエラーが発生し、サーバーが急停止してしまった場合、膨大な社内情報が危険にさらされ、大きな損失を被ることになるかもしれません。
そのため、事前にサポート体制を確認しておくことが重要です。電話やチャットでのサポートはあるか、休日・深夜対応は可能であるかなど、様々な観点からサポート体制をチェックしておきましょう。
トラブル発生時の対応速度が、機会損失を最小限に食い止める鍵を握ります。
おすすめの労務管理システム3選
本項では、おすすめの労務管理システムを3つ紹介します。前述したシステムの選び方を踏まえて、自社の目的に沿ったサービスを探してください。
SmartHR(スマートエイチアール)
【金額】
要問合せ
→料金・機能について詳しくはこちら
【特徴】
人事や労務に関する業務の自動化を推進するクラウド人事労務ソフトです。
【優れている点】
業務の生産性向上を支える各種便利機能が充実しています。
申請・承認機能(簡易ワークフロー)では、労務における様々な申請手続きのフォーム作成が可能です。
通勤経路や給与口座の変更だけでなく、企業内の資格取得申請など、多くの手続きを簡易的な申請フォームに集約することで、業務フローを大幅に短縮します。
また、全社員共通のワークフローを確立するだけでなく、従業員を指定して、独自の申請ステップを作成することも可能です。
これにより、特定の社員に承認権限を持たせ申請経路の作成や、承認者限定のフォームを作成するなど、目的に応じたシステムのカスタマイズが可能になります。
jinjer(ジンジャー)
【金額】
初期費用+1人あたり300円/月~
→料金・機能について詳しくはこちら
【特徴】
従業員情報や勤務実態、給与計算などを一元管理できるクラウド型システムです。
【優れている点】
従来は、タイムカードやエクセルなどを使用して、給与情報や勤怠情報を管理することが一般的でしたが、jinjer(ジンジャー)であれば1つのシステムで労務に関する様々な情報を一括管理できます。
柔軟なカスタマイズが可能であり、より高精度の検索機能を作成できる点も魅力的です。例えば、社員番号や氏名、所属グループなど基本的な社員情報のほかに、在籍区分や役職などの検索項目を必要に応じて設置することで、自社に適した理想の管理体制を構築できます。
また、簡易的な作業で最新情報を維持できる点も特徴です。
大本となるデータベースを更新するだけで、勤怠や人事、給与など様々な管理項目の最新データが反映されます。
freee(フリー)
【金額】
月額利用料(1~5人) | 月額利用料(6人以降) | |
ミニマムプラン | 2,000円~ | 1人あたり400円 |
スタータープラン | 3,000円~ | 1人あたり600円 |
スタンダードプラン | 4,000円~ | 1人あたり800円 |
アドバンスプラン | 5,500円~ | 1人あたり1,100円 |
→料金・機能について詳しくはこちら
【特徴】
個人情報の扱いに関して、一定水準を満たす企業が認定される、国際的な認証である「TRUSTe(トラストイー) 」を取得した、信頼性の高い労務管理システムです。
【優れている点】
多くのクラウドサービスと連帯が可能であり、既存のサービスと組み合わせて使用することで、さらなる業務効率化・生産性向上に寄与します。
例えば、他社の勤怠ソフトをすでに導入済みである場合、互換性の高いCSVファイルで情報を共有し、データの自動取り込みが可能です。
これにより、他社ソフト上での出勤打刻や、給与明細の発行通知を受けとることが可能になり、既存システムとのスムーズな連帯を実現します。
まとめ
今回はおすすめの労務管理システムや選び方の基準について解説しました。
労務管理システムを使用することで、年末調整や給与明細発行など、労務に関する様々な業務を自動化・効率化し、さらなる生産性向上を実現します。
あらゆる業務領域で自動化が推進されている昨今、すでに給与計算ソフトや勤怠管理システムなどの自動化ツールを導入している企業も少なくないはずです。
労務管理システムを後から導入する場合でも、他社サービスとの連帯が可能なモデルを選択すれば、既存のシステムを入れ替える必要がないため、導入ハードルはそれほど高くありません。
システムを導入する際は、インストール型かクラウド型か、導入済みシステムとの連帯は可能であるかなどに着目し、複数社を比較検討することがおすすめです。
自社の業務フローや事業モデルに合った労務管理システムを導入する際には、本記事で紹介した内容を参考にしてください。