イベント業界のDX化|デジタル化でスムーズなイベント運営

イベント業界のDX化|デジタル化でスムーズなイベント運営

新型コロナウイルスはイベント業界に影響を与え、国内においても、開催予定だった多くのイベントが政府の要請によって延期や中止となりました。しかし、新型コロナウイルスの感染脅威が収まりつつある現在、日本イベント産業振興協会(JACE)によると、イベント産業規模は感染症流行前と同じ水準に回復しています。また、今後のイベント業界の世界動向について、株式会社グローバルインフォメーションの「企業イベントの世界市場2025年~2029年」によると、2024年~2029年の年平均成長率は10.8%で成長すると予測されています。

イベント市場の成長に伴い、業務やコストの負担がより大きくなることは明らかです。イベント運営には参加者管理、会場の手配、当日の運営、アンケート集計など、数多くの業務が伴います。これらをアナログで管理すると、手間やミスが発生しやすく、コストがかさんでしまいます。

そこで重要なカギを握るのが「デジタルトランスフォーメーション(以下、DX)」です。経済産業省「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX 推進ガイドライン)」では、DXを以下のように定義づけしています。

「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」

つまり、DXとは、生産性向上や業務の効率化のために、デジタル技術を有効に活用して働き方やビジネスモデルを変革させることを指します。

そこで本記事では、イベント業界におけるDX化に着目し、その現状と課題、そして実際の導入事例を紹介していきます。

イベント業界のDX化における課題

新型コロナウイルスはイベント業界に負の影響のみを与えたわけではありません。その一例として、実際に参加者が来場する従来の「リアルイベント」に対し、ITツールを活用してオンライン上で開催される「オンラインイベント」が挙げられます。感染症の拡大を防止するとともに、時間・場所の制約に縛られることなく楽しむことができるオンラインイベントは、これまでのイベント市場にはなかった新たな需要を生み出しました。そのなかで、オンライン・オフラインイベントに関わらず、DX化によりイベント業界が抱える課題もでてきました。

1. システム導入時の費用

イベント業界のDX化を図る際、費用面の負担が大きいことがデメリットのひとつです。ライブで電子チケットを導入する際は、インターネットを利用するにあたって高速ネットワーク環境の構築が必要になります。また、利用者にとっても、ネットワーク障害がひとつあるだけで、円滑な入場・受付の妨げになります。そのようなネットワーク環境がない場合は、インターネットの利用範囲が制限されたり、通信費が高額になったりするケースもあります。

2.セキュリティ対策

DX化を進めるうえで、契約書や顧客の個人情報をデータで管理するため、セキュリティ対策を強化する必要があります。特にオンラインイベントでは、不正アクセスによる機密情報や個人情報の漏洩や金銭目的のインターネット詐欺やサイバー犯罪の危険性があり、厳重な管理体制が求められます。ずさんな管理では、企業に対しての不信感が募り、信用を失ってしまう可能性もあります。企業を守るためにも、個人情報の取り扱いには十分な注意が必須です。

3. チケットの転売

チケットの不正な転売は、紙ベースのチケットが主流だった頃からの課題であり、正規にチケットを入手するのが困難になったり、チケットが高額で転売されたりすることが問題視されてきました。2019年12月に「チケット不正転売禁止法」が施行されましたが、国民生活センターへのコンサートチケットの転売相談件数は2021年4月から2022年5月にかけて約6倍に増加しています。また、ウォーカープラスの「ライブチケット転売をした・購入した経験がある?」という20代から60代の男女293人を対象とした調査(2023年9月)によると、43.3%の人が「ある」と回答しました。電子チケットであるからといって安全性は完全に保証されておらず、チケットの転売がなくなる見通しは立っていません。

イベント業界がDX化するメリットとデメリット

メリット

1. ペーパーレス化を実現

チケットの作成や発送、入場時の確認には多くの時間と労力を必要とする上に、大規模イベントの参加者全員に対してたくさんの紙をつかうのは、ペーパーレス化がうたわれている昨今では非効率的です。デジタルチケットであれば、印刷費や郵送費などのコスト削減、資料作成の手間削減、情報伝達の迅速化といったメリットも生まれ、一瞬で発行できるうえに管理もかんたんです。参加者にとってもチケットの持ち運びが不要になり、スマートフォン一つで必要な情報をいつでもどこでも確認できる点や、ストレスフリーで円滑に入場・受付を行うことができる点はメリットです。

2. オンラインイベントの開催

オンラインイベントはインターネット上で開催されるイベントであるため、時間や場所を選ばず開催できます。来客型イベントのように、天候や集客人数に縛られない点もメリットです。オンラインイベントであれば、会場の手配や出展物の準備、人員調整など、開催までの事前準備の負担が少なくなるため、オフラインイベントよりもコスト面でのメリットも期待できます。

3. 効率的な顧客データ収集

事前予約システムを導入することで、イベント参加者の顧客データを効率的に収集できます。例えば、次の情報を比較的容易に手に入れることができます。

・参加者の氏名

・受付番号

・性別

・連絡先

さらに、一元管理システムやQRコードによる入場の導入により、参加者データの管理・分析がかんたんになり、受付業務の効率化とデータ収集を同時に実現できます。

デメリット

1.IT人材の不足

予約システムや電子チケットなどの新しいツールを導入した際は、従業員がそのツールを使いこなす必要があります。そのため、研修の実施、システムのマニュアル作成などが重要です。効果的な研修を行い、継続的に従業員を育成することによって、イベント業界のDX化が進展していきます。しかし、これらを取り組む際には多大な時間・費用がかかる傾向があります。

2. 顧客対応の変化

電子チケットの導入により、顧客対応の方法も変化します。電子チケットに関する問い合わせや、システムトラブルへの対応など、新たな顧客サポートの体制が必要となります。デジタルに不慣れな顧客には、丁寧な説明とサポートが求められます。高齢者など、デジタルデバイスを使いこなせない顧客への配慮も欠かせません。また、オンラインイベントの場合は参加者側のインターネット環境や閲覧するデバイスによって、イベントの印象が左右されてしまいます。

イベント業界におけるDX導入事例

ここからはイベント業界のDX導入の例を紹介します。

1. 予約システム

予約システムは予約受付→決済→顧客管理→集客まですべて自動化し、データ管理の効率化を可能にします。

RESERVA(レゼルバ)」は導入数30万社を超える、業界トップシェアのクラウド型予約システムです。利用業態は350種類以上にのぼり、最短3分でサイトを作成できるシンプルな操作性が高く評価されています。無料のフリープランから利用でき、初めて予約システムを導入する方にもおすすめです。

イベント運営におすすめの機能として、「レゼルバペイメント」という独自のクレジット決済方法が挙げられます。予約者は事前に支払いを完了できるため、予約当日はサービスを受けるのみとなります。サービス提供側も会計が不要になるため、予約管理者側・顧客側ともに、支払いにかかる手間が軽減されます。

参考サイト:RESERVA公式サイト「イベントのための予約システム」

2. オンラインライブ

画像引用元:ローチケ LIVE STREAMING「チケット情報・販売・予約

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、ライブ開催が困難な際に注目されたのがオンラインライブです。パソコンやスマートフォンなどを使って視聴するため物理的な距離や場所の制約がなく、世界中の人々が参加できるというメリットがあります。コロナ禍における新しい体験として急速に普及し、現在でも人気を集めています。

参考ページ:ローチケ LIVE STREAMING「チケット情報・販売・予約

3. ウェビナー

画像引用元:ZOOM「zoom Webinars」

ウェビナーとはインターネット上で開催されるセミナーや講演会などのことを指し、ウェブセミナーやオンラインセミナーとも呼ばれています。セミナーに限らず、就職イベントやプレゼンテーションなどのオンラインイベントにも向いています。一般的に、視聴者はカメラや音声をオフにして視聴できるので、オフラインイベントよりも気軽に参加できるというメリットがあります。

4. 電子チケットの導入

ライブを開催する際に、従来の紙のチケットではなく電子チケットを導入しているケースが増えています。スマートフォンにチケットのデータが直接届くため、チケットの申込みから、支払い、受取り、入場までをスマートフォンのみで行うことが可能です。また、スタッフが紙を印刷する時間、費用などが削減されるため、業務の効率化につながります。

参考ページ:LivePocket-Ticket「電子チケット予約・購入・イベント検索」

まとめ

今後のイベント業界はますます活発化していくことが予想されます。電子チケットやオンラインイベントなどのDX化を進めることで、イベントをよりスムーズに運営していくことができます。市場規模の拡大が予想されるイベント業界をさらに発展させるためには、DX化が欠かせません。

参考サイト:

Tickt Lab 「チケット販売のDXとは?メリット、デメリット、マーケティングに与える影響など解説!」

CLOUD PASS「イベントDXとは?メリットや実現できることを詳しく解説」

株式会社 日立ドキュメントソリューションズ「第1回「オンラインイベントのメリットとデメリットとは?」」