事業経営をする際に、資金調達は欠かせません。
事務所・店舗を借りる、設備投資をする、商品を仕入れる、従業員を雇用するなど、特に事業を開始する際は何かと費用が掛かるため、資金調達をしなければ十分に準備を整えることは難しいでしょう。
資金調達の目的は事業者によって様々ですが、業態・業種・事業規模に関わらず、資金調達の目的や財務状況によって最適な資金調達方法を選択する必要があります。本記事では、資金調達の方法と、資金調達のメリット・デメリットについて解説をしていきます。
資金調達とは何か?
資金調達とは、事業経営をする上で必要なお金を集めることです。主に金融機関など外部から新たに資金を調達することを指します。
集めた資金を元手に経営者は新たに設備投資をしたり、従業員を新たに雇用する、商品開発に活用することで自社の売上アップや取引拡大に努めます。
ある程度の規模の企業であれば「経理部」や「財務部」が業務を担いますが、中小企業など事業規模によっては経営者や役員が行っていることもあります。
企業にとって資金は、人間でいう血液です。そのため、資金調達業務はその企業の生命線です。事業の赤字が続けば、金融機関は融資を基本的に断りますので、その結果資金繰りが上手くいかずに廃業・倒産に追い込まれることになります。
また、現在の新型コロナウイルス感染拡大のように、予期せぬ事態により今まで黒字だった事業が突然赤字に転落したり、売掛金が回収できずに黒字倒産になることもあります。そうした万が一の事態のセーフティネットとして、資金調達は事業経営において重要な役割を持っています。
設備投資
新たに事業を開始する際や事業拡大する上で、設備を整える必要があります。例えば現在のコロナ禍では、多くの事業所で感染症対策関連費として設備投資を余儀なくされました。ビジネスモデルの転換を図るべく、新たに設備投資をした企業も少なくありません。
また、新たに事業を立ち上げる際は、イチから全て揃えなければなりません。個人・法人に関わらず、自社の資産だけで賄うことは現実的ではありませんので、その際に資金調達を活用することになります。
事業の運転資金の確保
事業運営にあたり、運転資金の確保が必要です。従業員の給与や、オフィスの家賃・光熱費・リース代など、何もしなくても毎月固定費が出ていきます。
また、物販や飲食店の場合では商品の仕入れが必要になります。商売の基本は、安く仕入れて付加価値をつけたものを高く売ることで、その差分が自社の儲けとなります。つまり商売を永続させるためには、常に仕入れ代金と固定費分の運転資金が必要です。
自社の信用力向上のため
会社が黒字経営の場合でも、民間金融機関から資金調達をすることがあります。理由としては、自社の信用力を高め新たな融資を受けやすくするためです。
なぜ資金調達が信用力向上に繋がるのでしょうか?それは、「借りたお金を滞りなくきっちりと返済している実績」が民間金融機関に対するアピールになるからです。
民間金融機関もイチ企業です。何も実績・信用がない相手に「お金に困っているので貸してください」と言われても貸すことはありません。健全な状態の時にこそ実績を作り、信頼を高めることで、新たに事業を始める際や不測の事態で資金繰りが厳しくなった時にでも、民間金融機関からの融資が受けやすくなります。
資金調達の方法
資金調達には主に3つの方法があります。ここからは、それらの方法の内容やメリット・デメリットを解説していきます。
資本を増やす
資本を増やすことを「エクイティ・ファイナンス」と呼び、「株式の発行」という意味です。具体的な方法としては、「新株発行」「ベンチャーキャピタル」「エンジェル」「クラウドファンディング」などが挙げられます。
<メリット>
・補償義務がなく、返済しなくていい
・集まった資金は自由に運用ができる
・保証人や担保がないので、金融機関からの借入には信用力が足りない企業でも利用可能
<デメリット>
・株主の持ち株数によって経営権が変わり、合併や買収のリスクがある
・出資金の返済義務はないが、配当金を払う義務がある
負債を増やす
負債を増やすことを「デッド・ファイナンス」と呼びます。デッド・ファイナンスは期限を設けて融資を受けることです。元本と決められた利息を、期日までに少しずつ返済していきます。具体的な方法としては、「公的融資」「銀行融資」「ビジネスローン」「手形割引」「売掛債権担保路融資」「社債」などがあります。
※個人事業主で融資に関する詳細を知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
→「個人事業主が知っておくべき融資・補助金制度の基礎」
<メリット>
・公的融資は、事業を始めたばかりの人でも借りやすい
・民間の金融機関だけでなく、商工会議所・日本政策金融公庫などの政府系金融機関も行っており、種類が豊富
<デメリット>
・銀行融資やビジネスローンは信用力が見られる
・不動産などの担保や保証人が必要
・利息や手数料が掛かる
資産を売却する(現金化する)
今ある資産を現金にすることも、資金調達のひとつです。具体的には、「ファクタリング」「セールス&リースバック、不動産リースバック」「債権回収」などがあります。
<メリット>
・素早く資金調達ができる
・手数料などで多少の減額はあるが、手持ち資産が大きく変わらない
・企業の信用度が低い状況でも利用が可能
<デメリット>
・現金化する資産がなければ利用できない
・現金化することで本来の価値より低い価格になる
・現金化したいものに将来的な信用力がないと取引が困難になる
まとめ
いかがでしたでしょうか。この記事では、資金調達の具体的な方法とメリット・デメリットについて解説してきました。資金調達には「資本を増やす」「負債を増やす」「資産を売却する」などがあり、それぞれにメリット・デメリットがあることがお分かりいただけたかと思います。
各種手続きや審査が必要なものもあり、資金調達は決して簡単ではありませんが、事業経営にあたって資金調達は必要不可欠です。資金調達をすることで、企業の財務状況を安定化させるだけではなく、新規事業の立ち上げや事業拡大に役立ち、新しいビジネスチャンスや売上拡大に繋がります。
多くの人は、幼い頃から「人からお金を借りることは悪いこと」「借金ではなく貯金」という価値観を無意識的に植え付けられてきました。そのため、資金調達が上手くできない事業者も多くいます。
しかしながら、ギャンブルや消費目的の借金と、事業成長のための借入は全く目的も意味も異なります。夢や希望を託して喜んで出資してくださる、投資家は世の中に沢山います。
ぜひ今回ご紹介した資金調達方法の中で、より詳しい内容をご理解いただいた上で、自社に合った資金調達を選択していただければと思います。
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