葬儀業界のDX化|デジタル技術の活用による人手不足の解消

葬儀業界のDX化|デジタル技術の活用による人手不足の解消

葬儀業界では、社会全体の高齢化を背景に、今後も葬儀に関する需要が見込まれています。国立社会保障・人口問題研究所が公表した『日本の将来推計人口(令和5年4月推計)』によると、2030年の死亡数は推計160万人を超える予測です。一方で、葬儀需要の増加にともない、火葬待ちの長期化といった問題が生じています。その要因には、葬儀会社の人員不足や火葬場施設の不足が挙げられます。

加えて、コロナ禍の影響や遺族の費用負担の軽減を理由に、家族・近親者のみで行う少人数での葬儀形式が拡大しています。参列者を限定しない従来の一般葬と比較して、1件あたりの葬儀単価が低いため、収益の減少が業界全体にも影響しています。収益の減少が続くと、従業員の待遇条件の悪化を招き、さらなる人手不足を引き起こす可能性があります。

人手不足や収益悪化が進む葬儀業界における現状を打破するための重要なカギとなるのが、「デジタルトランスフォーメーション(以下、DX)」です。経済産業省の「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX 推進ガイドライン)」では、DXを以下のように定義づけしています。

「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」

今後予測される葬儀需要の増加に備え、人手不足の解消を対策するにはDX化の推進が欠かせません。一例として、AIの活用が従業員の業務削減に貢献することが挙げられます。

そこで本記事では、葬儀業界のDX化に着目し、現状の課題や導入によるメリット・デメリット、そして実際の導入成功事例を紹介しながら解説します。

葬儀業界のDX化における課題

深刻な人手不足と収益減に陥っている葬儀業界では、以下のような理由からDX化が依然として停滞しています。

1.アナログ中心の受注チャネル

葬儀業界では、参列者や喪主を含め高齢の人が多いことから、現在も電話やFAXが主要な連絡手段として利用されており、紙を中心とした管理も残っています。そのため、情報のデジタル化や各種システムとの連携が進みにくい状況にあります。

2.業界特有の事情による心理的抵抗

大切な人を失った遺族をケアするといった特性上、デジタルの活用による効率化は遺族や参列者に対して冷たい印象を与える場合があります。また、AIでは遺族に寄り添うことが難しい場面もあるため、DXの導入に心理的な抵抗が生まれやすい事情があります。

3.IT人材の確保の難しさ

従来のアナログな対応が慣習化しているため、デジタル化に向けた投資が後回しにされやすい現状です。そのうえ、ITスキルの教育体制が整っておらず、デジタルツールを活用できる人材が不足している企業も多く存在します。

葬儀業界がDX化するメリットとデメリット

葬儀業界におけるDX化には大きな可能性がある一方で、懸念点も存在します。そのため、メリットとデメリットの両面を理解し、適切に実施することが重要です。

メリット

1.作業時間の大幅な削減

オンライン予約システムなどの導入は、電話による聞き取りミスやFAXからの転記ミスを防ぎ、スムーズかつ正確なサービス提供を可能にします。オンライン上で顧客管理もできるようになると、紙書類を取り扱う手間が減り、事務作業の負担軽減につながります。

2.顧客満足度の向上

突然の不幸が起きた際に、オンライン受付ができると、深夜や早朝でもすぐに手配を進められるため、心強い安心感を与えられます。加えて、業務を効率化することで、スタッフは遺族に寄り添う機会を増やし、より丁寧な接客に注力できます。

3.競合との差別化

葬儀への参列が困難な人に向けたオンライン葬儀をはじめ、訃報通知や供花・返礼品の手配など、遺族の多様なニーズに応じたオンラインサービスの提供は、競合との差別化にも貢献します。

デメリット

1.システム導入時の費用 

導入するシステムによっては、年間のライセンス料などランニングコストが発生します。最初から広範囲で導入すると、初期費用が膨大になるほか、トラブル発生時の影響も大きくなります。

2.導入直後の生産性の低下

従来のアナログな方法を変更する際に、新たにマニュアルの作成・配布、説明の時間をとる必要があり、一時的にスタッフの業務量が増加する場合があります。さらに、データのデジタル化にあたり、時間的な負担もともないます。

3.データセキュリティの懸念

DX化を進めるうえで、取引先や顧客の個人情報、契約内容をデータで管理するため、セキュリティ対策の強化が必要です。ずさんな管理を行うと、会社に対する不信感が募り、信用を大きく損ねる恐れがあります。

葬儀業界におけるDX導入事例

葬儀業界におけるDX推進には、デメリットもある一方、多くのメリットが期待できます。なかでも、以下3つの取り組みは、業務効率化や人手不足への対策として特に有効です。

1.予約システム

画像引用元:RESERVA公式サイト「葬儀会場のための予約システム」

予約システムは予約受付から決済、顧客管理、集客までをすべて自動化し、データ管理の効率化を実現します。業界トップシェアを誇るクラウド型予約システム「RESERVA(レゼルバ)」は、350業種以上に対応しており、その使いやすさから35万社を超える企業に導入されています。無料のフリープランから利用でき、初めて予約システムを導入する方にもおすすめです。

葬儀会社での活用にあたっては、予約受付に加えて顧客情報をまとめて管理しやすくなるほか、予約アンケートのカスタマイズ機能やオプション設定機能なども便利です。これらによって、利用者の利便性向上と葬儀予約にかかわる煩雑な業務の改善が実現します。

参考サイト:RESERVA公式サイト「葬儀会場のための予約システム」

2.クラウド型業務支援システム

画像引用元:AgeRobotics株式会社「トップページ」

見積書や請求書の発行など、葬儀会社の業務は多岐にわたります。それらの事務作業を一元化できるのが、クラウド型の業務システムです。AgeRobotics株式会社が提供する「スマート葬儀」の場合、発注や請求管理、Excel作業といった時間のかかる作業を削減できます。

また、同システムはタブレット機能を備えており、タブレットで顧客にプラン情報を共有しながら見積書を作成できます。PDFの送付や電子署名にも対応しているため、契約業務を円滑に進めることが可能です。

参考資料:AgeRobotics株式会社「トップページ」

3.遺族向けオンライン訃報配信サービス

画像引用元:株式会社アスカネット「トップページ」

訃報を多くの関係者へ伝える際、一人ひとりの連絡先を確認しながら電話をかけることは、遺族にとって大きな負担となります。こうした負担を軽減するサービスのひとつが、訃報をオンラインで共有できる「tsunagoo(つなぐ)」です。

SNSやメールで関係者に訃報通知ができるため、電話の手間を省き、遺族に時間と精神的なゆとりをもたらします。一方で、訃報連絡を受けた人は、葬儀の情報を知るだけでなく、弔電や供花・供物をオンラインで手配することもでき、遠くにいながらでも遺族に気持ちを届けられます。

参考サイト:株式会社アスカネット「トップページ」

まとめ

今後の日本では、高齢化から葬儀需要が増加していく反面、少子化により人材確保が難しい状況が続くと予想されます。こうした状況において、DXの導入から現場の業務負担を軽減することで、より付加価値の高い業務に時間を充てやすくなり、接客や提案の質の向上にもつながります。

業務の生産性を高めながら、顧客満足度を向上するためにも、葬儀業界では今後さらにDXの推進が重要になると考えられます。