リフォーム業界は近年、エネルギー価格の上昇による建材価格の高止まりや、家電量販店などの異業種大手の参入から、価格や集客面での競争が激しくなっています。加えて、厚生労働省が2025年10月に公表した『建設労働をめぐる情勢について』では、建設業就業者数がピーク時の1997年から約30.4%減少したことが示されています。
このようなコスト増加による厳しい経営環境や人手不足が続くなか、帝国データバンクが発表した「建設業」の倒産・休廃業解散動向(2026年上半期)によると、全国のリフォーム会社を含む建設業の倒産件数は5,937件に達しました。上半期では、リーマン・ショック直後の2009年を上回り、過去最多の倒産件数でした。
経営難と人手不足が進むリフォーム業界における現状を打破するための重要なカギとなるのが、「デジタルトランスフォーメーション(以下、DX)」です。経済産業省の「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX 推進ガイドライン)」では、DXを以下のように定義づけしています。
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」
建築業者の倒産が相次ぐ現状に歯止めをかけ、社員が働きやすい環境を作るためにはDX化の推進が欠かせません。一例として、AIの活用が社員の業務削減に貢献することが挙げられます。
そこで本記事では、リフォーム業界のDX化に着目し、現状の課題や導入によるメリット・デメリット、そして実際の導入成功事例を紹介しながら解説します。
リフォーム業界のDX化における課題
深刻な経営状況と人手不足に陥っているリフォーム業界では、以下のような理由からDX化が依然として停滞しています。
1.アナログ運用の固定化
多重的な下請け構造によってシステムの統一が難しく、契約や工事内容を証明するために書面を保存する慣習も根強く残っています。そのため、進行管理を紙やExcelに依存している事業者は少なくありません。人手不足によって1人あたりの業務量が増加している状況で、デジタル化にあたり、マニュアルの作成や全体説明会を実施する場合は、業務の負担がさらに大きくなります。
2.IT人材・知識の不足
技能者の高齢化が進み、スマートフォンや施工管理ツールなどの操作に不慣れな人もいるため、現場での利用が定着しにくい状況です。また、中小企業が多く、デジタルツールを導入し、運用できる専門知識を持った人材や社内リソースが不足している実態もあります。
3.コスト増加による収益悪化
建材価格や物流費の高騰など、コストの増加が利益を圧迫するなか、システムの導入に投資する余裕がない企業もあります。それ以外にも、導入後にどの程度の業務効率化が見込めるのか、費用に見合う効果が得られるのかを判断しにくく、導入に踏み切れないケースもあります。
リフォーム業界がDX化するメリットとデメリット
リフォーム業界におけるDX化には大きな可能性がある一方で、懸念点も存在します。そのため、メリットとデメリットの両面を理解し、適切に実施することが重要です。
メリット
1.業務効率化による生産性の向上
紙での顧客情報の管理やExcelでの見積書作成、メールでの連絡など、情報が複数の場所に分散している場合、必要な情報をすぐに確認できないことに加え、情報の共有・伝達に漏れが生じる可能性もあります。さらに、紙への転記作業は時間がかかるうえに、入力ミスが起きる懸念があります。それらはDXツールを導入することで非効率な業務を改善し、1人あたりの生産性の向上につなげることができます。
2.ノウハウの属人化の解消
技能者の高齢化と人手不足による技術伝承の課題に対して、ベテランの職人が持つ技術や知識をデータとして記録・共有することで、ノウハウの引き継ぎが可能です。ほかにも、マニュアルのデジタル化や検索機能の利用から、教育時間の削減を図れます。
3.顧客満足度の向上
DXは、競合との差別化に必要な顧客満足度の向上にも役立ちます。例えば、顧客情報の事前収集から最適な接客を実現したり、3Dシミュレーションでの完成イメージの共有から、設計段階でのミスマッチを防いだりできます。
デメリット
1.システム導入時の初期費用・維持費用
導入するシステムによっては、年間のライセンス料などランニングコストが発生します。最初から広範囲で導入すると、初期費用が膨大になるほか、トラブル発生時の影響も大きくなります。
2.デジタルに不慣れな社員・顧客の心理的抵抗
デジタルツールに慣れていない社員や顧客は、DX化に抵抗感を示す可能性があります。また、従来の方法を変更する際は、新たにマニュアルの作成・配布、説明の時間をとる必要があり、一時的に社員の業務量が増加する場合もあります。
3.データセキュリティの懸念
DX化を進めるうえで、取引先や顧客の個人情報、契約内容をデータで管理するため、セキュリティ対策の強化が必要です。ずさんな管理を行うと、会社に対する不信感が募り、信用を大きく損ねる恐れがあります。
リフォーム業界におけるDX導入事例
リフォーム業界におけるDX推進には、デメリットもある一方、多くのメリットが期待できます。なかでも、以下の3つの取り組みは、比較的導入しやすい価格かつ人手不足への対策としても特に有効です。
1.予約システム

予約システムは予約受付から決済、顧客管理、集客までをすべて自動化し、データ管理の効率化を実現します。業界トップシェアを誇るクラウド型予約システム「RESERVA(レゼルバ)」は、350業種以上に対応しており、その使いやすさから35万社を超える企業に導入されています。無料のフリープランから利用でき、初めて予約システムを導入する方にもおすすめです。
リフォーム事業者におすすめの機能として、予約受付以外にも、予約時に顧客情報を事前収集できるアンケートや、オンライン相談・査定に活用できるZoom連携が挙げられます。予約枠の有効活用だけでなく、顧客に合わせた丁寧な接客を実現し、顧客満足度の向上にも寄与します。
参考サイト:RESERVA公式サイト「リフォームのための予約システム」
2.施工管理システム

見積作成や管理業務など、社員の業務は多岐にわたります。それらの事務作業を一元化できるのが、クラウド型施工管理システムです。株式会社アンドパットの「ANDPAD」は、営業活動の仕組み化、顧客情報の管理、受発注業務、工事関連の資料や協力会社との連絡など、あらゆる業務を一元的に管理可能です。これにより、情報管理や連絡にかかる作業を効率化でき、受注可能な案件数の増加が期待できます。
また、営業進捗などの経営管理において、案件を横断した数字の可視化や、受注案件の入金状況の確認もできるため、キャッシュフローの健全化に貢献します。
参考資料:株式会社アンドパット「リフォーム」
3.AIシミュレーター

株式会社ラクタノの「AIリノベーションシミュレーター」は、顧客に完成イメージを伝えにくい、提案資料の作成に時間がかかるといった課題に対し、AI生成を活用することで、高品質な完成イメージを短時間で作成・提案できるサービスです。
同サービスを活用することで、1枚あたり約15秒で画像を生成でき、打ち合わせ中でもリアルタイムに完成イメージを提示できます。さらに、50以上のスタイルセットや家具・人物配置モード、建材の指定機能を搭載しているため、顧客の要望に応じた幅広い提案が可能です。
参考サイト:株式会社ラクタノ「トップページ」
まとめ
リフォーム業界では、建材価格などのコスト高騰や人材不足が深刻であり、今後も厳しい経営状況が続くと予想されます。こうした状況において、DXの導入によって現場の業務負担を軽減することで、より付加価値の高い業務にリソースを充てやすくなり、接客や提案の質の向上にもつながります。
業務の生産性を高めながら、顧客満足度の向上を図るためにも、リフォーム業界では今後さらにDXの推進が重要になると考えられます。