人材業界のDX|人材不足の日本市場に残された生き残り戦略とは

人材業界のDX|人材不足の日本市場に残された生き残り戦略とは

人材業界のDX化においては、顧客となる業界ごとのデジタル化ニーズを理解することが不可欠です。慢性的な人材不足の課題をもつ介護、医療、製造業は今後も人材ニーズがあり続け、DXはいかに少ない人数で業務効率化できるか、その役割を担うでしょう。対して、採用管理、経理業務、給与計算、請求業務など、いわゆる、事務職においては近い将来IT技術にとって代わる可能性は否定できません。

人材業界がターゲットとする各業界でどのような変遷があるのか、また今の人材ビジネスがどのような変革が起きてくるのか、求人集め、応募者管理、スクリーニング、面談、面接調整、フィードバック回収、入社手続き、人事支援、これらの人材ビズネスのプロセスの多くにはITおよびIoTによって取って代わり、経営者1人体制で売上をたてることも夢ではないかもしれません。

実際にリクルート社やパソナ社によって構造化された日本の特殊な人材ビジネスは海外の人材ビジネスと比較し、後進的な要素も多く持ちます。それは、リファーラル制度やタレントプール、SNS採用という概念がまだ浸透していないことが強く影響しています。

DXとは何か

DX(デジタルトランスフォーメーション)スウェーデンの学者、エリック・ストルターマン教授が2004年に提唱した概念であり、様々な定義が各専門サイトで名づけられていますが、bizlyでは、「デジタル技術によってもたらされる新しい『価値』で、ビジネスモデル/ライフスタイルが大きく変容するさま」とします。

経済産業省では「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)」において、次の解釈がなされています。

「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」

これまで提唱されてきた、IT化、IoT化は、業務効率化などを目的としたものであり、DX化はこれらを用いて組織・仕組みが変わりビジネスモデルに変化が加えられるなどより大きな枠組みでの変革を意味します。

画像引用元:経済産業省公式サイトより

近未来で言えば、自動運転技術や、AIによるカスタマーサポート(チャットボット)、ドローン技術による農業の農薬散布などがありますが、これらもIT化の枠を超え、各企業の、業界のビジネスモデルが大きく変革することが注目されています。

このような「ICTの浸透が人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させるデジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)」は、すでに現在進行形で進みつつある時代にあるといえます。

インフラ、制度、組織、生産方法など従来の社会・経済システムに、AI、IoTなどのICTが導入され、次に、社会・経済システムはそれらICTを活用できるように変革される。さらに、ICTの能力を最大限に引き出すことのできる新たな社会・経済システムが誕生することになりえます。

製造業が製品(モノ)から収集したデータを活用した新たなサービスを展開したり、自動化技術を活用した異業種との連携や異業種への進出をしたり、シェアリングサービスが普及して、モノを所有する社会から必要な時だけ利用する社会へ移行し、産業構造そのものが大きく変化していくことが予想されます。 では、人材業界には具体的にどんなDX化の未来が待っているのでしょうか。

コロナ禍‐人材業界の変化

新型コロナウイルス感染症の流行は、人材業界に大きな変革の機会をもたらしたと捉える見方もあります。そもそも人材業界とは、細かにみると、

・人材紹介
・人材派遣
・技能実習、特定技能などの外国人人材斡旋事業
・求人広告サービス
・人材コンサルティング

これらの分類に分けられます。

古くからリクルートという超巨大企業によって仕組み化されてきた日本の人材業界は、2021年現在、その構図に変革が起きつつあります。ここに最近台頭してきたのが、WantedlyなどをはじめとするSaaS (Software as a service)ビジネスです。ソフトウェアを活用し、人材雇用の在り方をガラッとかえ、欧米圏ではトレンドとなる、タレントプール、リファーラルなどの採用手法を取り入れるサービスが、今後も日本の人材市場に参入することは予想されます。

新型コロナウイルス感染症拡大により、廃業・休業をする企業が増え、飲食店、観光業は大きな打撃となりました。また国際的な流通網への影響もあり、製造業においては海外からの部品が輸入できないという事態にもなり、幅広い業界の採用支援に従事する人材業界では、専門領域ごとに業績の差が出たはずです。

日本の人材業界におけるDXの活用と課題

少子高齢化が進む日本で、枯渇する「人材」を主たるサービスとする人材業界に未来はあるのでしょうか。その答えは、人材を軸に提案する「採用のトータル支援」にあります。これまでは、顧客の課題解決に向け、紹介、派遣して終わる(フォローアップやその他付加価値は別として)ビジネスモデルであったのを、人材で解決するのでなく、システムやツールを含めて提案する「まるごと」の支援が主流となります。

かつて外国人人材の登用がブームとなり、技能実習制度の問題点も取り沙汰される中、それでも外国人留学生の確保から日本は戦略的に優秀な外国人人材を日本に誘致する計画がありました。

コロナ禍でこのトレンドは一旦停滞し、アフターコロナで再度盛り上がりを見せる見込みはある一方で、多くの業界では「無人化」、たとえばコンビニ、施設管理、自動運転システムにおいては「人材」を必要としないモデルに切り替えたところもあり、AI技術の台頭でコールセンター業務なども、システムに置き換わることが予想されます。そう遠くない未来に、「事務」の仕事がなくなっていくことは想像に容易いわけです。

こうした時に生き残りをかけた人材業界では、人材+α、さらにいえば最新のシステムにいかにアンテナを張り、パッケージとして顧客に提案できるかが重要になります。

提案例1.業務のオンライン化・仕組みの見直し

テレワークやワーケーションの取組みが活発化する中で、社内の仕組みから変えていく必要があります。在宅ワークをいまだ実施できていない顧客に対しては、課題を抽出し、実行提案までもっていくアプローチが必要でしょう。場合によっては社内にエンジニアを雇用する提案をするケースも今後増えるかもしれません。

提案例2.業務プロセスのデジタル化

人事部、総務部、経理部、営業部が縦割りで作業していた組織を見直し、経営層に見える化する仕組みの導入により、企業の体制強化、社員満足度向上を創出できます。紙運用、クラウド未使用の企業では、DX化の波に乗り遅れることは明白であり、この提案のためには十分なソフトウェア・サービスが各社からリリースされています。

各社ソフトウェア・サービスの比較記事は「サービス比較特集」をご覧ください。

提案例3.社員管理のデジタル化

シフト管理、人事評価、面談記録など、人事部が事務作業で担い、他部署には実像が見えなかった仕組みを見える化し、データ化することで客観的視点で、組織人事戦略のありかたを見直すことができます。離職率が高い顧客においては、社員の情報管理に課題を抱えるところが多いはずです。これを改善提案するためには、人事戦略のコンサルティングの範疇を超えた、システム導入の提案が不可欠です。

まとめ

株式会社矢野経済研究所の国内人材ビジネス市場調査によると、

画像引用元:株式会社矢野経済研究所より

新型コロナウイルス感染症拡大前の2019年全盛期から2020年にかけて、市場規模予想は減少傾向にあるものの、業界としてのニーズは引き続き継続されると考えます。DX化、無人化は人材を必要としなくなるのではなく、業務効率化をもたらし、さらに「人材」にしかできないことが再認識され、注目され、ここに広いに競争が生まれるでしょう。

同所の調査結果によると「人材派遣業市場は、就労人口の減少や働き方改革を起因とする労働力不足を背景に、主力の一般事務派遣が好調を維持した。また、ITエンジニアや介護系人材は需要の高まりに対し人材の供給が逼迫する状況が続いている。人材紹介業市場は、ここ数年において二桁増の高い伸長率で推移していたが、当年度後半以降、景気の先行き不透明感が広がる中、企業の人材採用意欲の減退等を受け微増推移に留まった。」 とあり、IT業界などにおいては今後更なる人材ニーズが生まれることも視野に、人材ビジネスモデルの再構築、業界の選定、そして何よりも人材会社自身のDX化を真剣に考えるときが来ています。