日本産業における生産性運動の中核組織である日本生産性本部は2025年10月、「レジャー白書2025」を発表しました。同書は、全国15~79歳の約3,000人を対象とした余暇活動調査の結果をもとに、日本における余暇の実態をとりまとめた統計報告書です。それによると、2024年の余暇市場は75兆2,030億円で、前年に比べて5.6%増加しました。
市場規模が拡大する一方、レジャー業界では、早期離職の多さが問題視されています。総合情報サービス企業である日本総合研究所が発表した「観光業の人手不足の現状と課題」によると、観光業は全産業の平均と比較して休日が9日少なく、年収も100万円程度少ないことが明らかになりました。若年正社員の半数以上が休日や給料の面で不満を抱き、転職の意向を強めています。
人手不足が進むレジャー業界の現状を打破するために重要なカギを握るのが、「デジタルトランスフォーメーション(以下、DX)」です。経済産業省の「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX 推進ガイドライン)」では、DXを以下のように定義づけしています。
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」
スタッフが働きやすい環境を整えるためには、DXの推進が欠かせません。例えば、AIを活用することで、現場の業務負担を軽減できます。
本記事ではレジャー業界のDX化に着目し、現状の課題や導入によるメリット・デメリット、そして実際の導入成功事例を紹介しながら解説します。
レジャー業界のDX化における課題
人手不足の解消や顧客満足度の向上に向けて迅速な対応が求められているレジャー業界では、以下のような理由からDX化が依然として停滞しています。
1.専門人材の不足
DX化を推進するにあたり、専門的な技術や知識を有するDX人材の確保は不可欠です。しかし、人手不足が深刻なレジャー業界では人材の確保自体が難しく、専門人材の誘致や育成にかかるコストなどの観点からも、業務体制の刷新に踏み切れない施設が少なくありません。
2.初期費用の負担
現在のレジャー業界では、大手の施設とそれ以外とでの格差が広がっており、特に地方の小・中規模の遊園地などは苦戦を強いられています。利益の増加が見込めない施設では、システム導入に必要な費用を捻出する余裕がないため、DX化が後回しになってしまう現状があります。
レジャー業界がDX化するメリットとデメリット
レジャー施設におけるDX化には大きな可能性がある一方で、懸念も少なくありません。そのため、メリットとデメリットの両面を理解し、適切に実施することが重要です。
メリット
1.人員配置の最適化
1日に多くの観光客が訪れるレジャー施設では、受付業務の時間が長くなります。それの自動化が実現すると、チケット販売から本人確認までの業務に人手を割く必要がなくなります。その分、ショーの準備や施設内の清掃、顧客対応などに人員を配置できるようになり、混雑時やトラブル発生時の人員不足を補うことができます。
2.施設における稼働状況の可視化
広大な敷地に大型のアトラクションを備えた大規模な施設や、スタッフ1人あたりの担当箇所が複数ある人手不足の施設では、混雑状況や運行状況が不透明になりやすい傾向があります。これらの状況をインターネット上にリアルタイムで表示できるようになると、どの場所で何の対応が必要なのかを確認しやすくなります。これにより、施設全体の管理が容易になり、スタッフ間の稼働状況に関する認識のずれも防ぎやすくなります。
デメリット
1.システム障害時の対応
すべての業務をシステムで一元化した場合、ネットワーク障害や停電時は多くの業務が停止してしまいます。自動化していた業務で手動対応が必要になるため、受付対応から園内の案内、売店の運営まで、あらゆる場面でスタッフによる緊急対応が必要となり、通常よりも業務負担が増加する可能性があります。
2.失われていく独自性
デジタル化による効率化は、体験の無機質化にもつながります。観光分野に特化した調査分析を行う株式会社JTB総合研究所が2025年5月に発表した「『旅に求めることについての調査』~旅における「非日常」とは~」では、観光客が旅行先で求めるもののひとつとして、人との関わりが挙げられています。ショーや顧客対応などで人との触れ合いが減少してしまうと、観光地としての個性や魅力を失いかねません。
レジャー業界におけるDX導入事例
レジャー業界におけるDX推進には、デメリットもある一方、多くのメリットが期待できます。なかでも、以下の3つの取り組みは、人手不足への対策において特に有効です。
1.予約システム

予約システムは予約受付から決済、顧客管理、集客までをすべて自動化し、データ管理の効率化を実現します。業界トップシェアを誇るクラウド型予約システム「RESERVA(レゼルバ)」は、350業種以上に対応しており、その使いやすさから35万社を超える企業に導入されています。無料のフリープランから利用でき、初めて予約システムを導入する人にもおすすめです。
レジャー施設の運営におすすめの機能として、オンライン上で事前にカード決済ができるレゼルバペイメントや複数の料金設定機能などが挙げられます。これらによって、来園者の利便性向上とチケット販売業務の効率化が実現します。
参考サイト:RESERVA公式サイト「ウォーターパークの予約システム」
2.業務アプリ

多くの生物を飼育している水族館や動物園などの施設において、日々の飼育記録は重要であると同時に、多くの時間を要する業務でもあります。こうした業務を効率化できるのが、記録作業や日報管理などをデジタル化するアプリです。
アステリア株式会社の「Platio(プラティオ)」の場合、100種類以上のテンプレートからオリジナルの業務アプリをかんたんに作成でき、データの管理や報告書作成などの業務において、転記作業やヒューマンエラーを削減できます。また、動物の餌やりの際に個体ごとの食事量をその場で端末に入力できるようになるため、オペレーションの効率化につながります。
参考サイト:パナソニックデジタル株式会社「Platioを導入 モバイルアプリで飼育データの記録が簡単に 最大110分/日短縮された時間はいきものと向き合う時間へ」
3.クラウド型POSレジ

大手レジャー施設では、チケット販売窓口やお土産店だけでなく、施設内の露店もあわせて膨大な数の販売データが存在します。そのような施設全体の売上管理を一元化できるのが、クラウド型POSレジです。同システムでは販売時点の情報をインターネット上で管理でき、集計のための手打ち計算作業を削減します。
株式会社スマレジのシステムの場合、ネットワーク環境が不安定な屋外においても端末内に販売データが保存され、継続して利用可能です。また、インターネットへの接続が回復次第、クラウドに自動でデータを同期するため、店舗側での復旧対応は必要ありません。
参考サイト:スマレジ公式サイト「公園・遊園地・遊戯場の現場運営を支える『POSレジの7機能』」
まとめ
過酷な労働環境やそれにともなう早期離職者数の多さが深刻な課題となっているレジャー業界では、大手の施設が積極的にDX化に取り組んでいる一方、それ以外の施設においてはあまり進んでいません。
業界全体の人員不足が加速するなか、今後も売り上げや顧客満足度の観点において、格差が広がっていくと予想されます。そのような状況下で、レジャー施設が予約システムや業務アプリなどを導入し、現場負担を軽減することで、労働力不足への対応を進めやすくなります。
さらに、スタッフは業務効率化によって顧客対応や新規施策などにかける時間を確保しやすくなるため、顧客体験における質の向上を目指せます。こうした人員不足や顧客満足度に関する課題の解決に向けて、レジャー業界では今後もDX推進が求められています。