ライブエンターテインメントのDX化|コロナ禍を経て生まれた新しいライブのかたち

ライブエンターテインメントのDX化|コロナ禍を経て生まれた新しいライブのかたち

新型コロナウイルスの流行にともない、ライブエンターテイメント業界は大きなダメージを受けています。ぴあ総合研究所の調査によると、2020年度の国内ライブエンターテイメント市場規模は、2019年比で82.4%減の1,106億円、2021年度は2019年比で55.7%減の2,787億円となっています。
(2020年度市場規模参照元:「『2021ライブ・エンタテインメント白書』のサマリー」)
(2021年度市場規模参照元:「ライブ・エンタテインメント市場がコロナ前の水準に回復するのは、最短で2023年 / ぴあ総研が将来推計値を公表」)

動員数・市場規模ともに、コロナ禍以前の水準には程遠い状態ですが、最近は感染拡大防止対策を徹底した上で、徐々に大型のライブやツアーが開催されるようになってきました。しかし、未だに感染症の影響はライブエンターテイメント業界に色濃く影を落としており、どのようにしてイベントの集客率を上げるか、どのように活動していくかは今もなお、大きな問題となっています。

そこで重要になってくるのが、DX化です。なぜなら、DXに向けてデジタル化を進めることは、東京都防災ホームページ内「イベント開催等における必要な感染防止策」で挙げられる、来場者間の密集回避、参加者の把握・管理にもつながってくるからです。

本記事では、DXとは何なのか・どのように生かせるかを考え、ライブエンターテイメント業界の未来の可能性を探っていきます。

ライブ・コンサート・フェスティバルにおけるDXとは

まずDX(デジタルトランスフォーメーション)とは、経済産業省が策定した「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン」では、以下のように定義づけされています。

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること

つまり、DXとは、生産性向上や業務の効率化のために、デジタル技術を有効に活用して働き方やビジネスモデルを変革させることを指します。

テクノロジーの進化・デジタル技術によって、私たちを取り巻く環境は変化し続けています。そのため、テクノロジーの進化・デジタル技術の進歩に対応し、生産性や競争力維持・強化する必要があります。そこでDX化が重視されるようになりました。

例えば、予約システムを導入して「チケットの予約・決済・顧客情報をデジタル化し、一元化して管理する」こともDX化の例の1つです。これにより「従業員による電話対応やイベント当日の精算などの負担の軽減」や、「時間の有効活用によるパフォーマンスのクオリティ向上」が実現し、生産性の向上や業務の効率化へとつながっていきます。それと同時に、事前決済によって接触を避けたり、混雑を軽減したりと、DX化は新たな時代に安心してイベントに参加できる環境づくりにも貢献しています。

DX化がライブエンターテイメント業界が生き残るため、発展していくために重要な役割を担っていることは明らかです。

ライブ・コンサート・フェスティバルにおけるDX導入例

ここからはライブやコンサートのDX化において有効なサービスを紹介します。

⒈予約システム

予約システムは、予約受付→決済→予約管理・顧客管理を全て自動化することができます。


予約システムを導入するメリットは、

1.従業員の負担が減り、業務の効率化が可能
2.24時間予約受付可能となり、集客力アップ
3.業務の正確性が増し、予約時のミスを削減
4.カレンダー機能によって、イベントの日時・費用を一目で確認可能

などの4点が挙げられます。これにより電話対応時間の削減や顧客からの問い合わせ減少に大きな影響を与え、他の業務に時間を回せることができるので、ライブやイベントのクオリティ向上につながっていきます。

株式会社コントロールテクノロジーが提供する予約管理システム「RESERVA(レゼルバ)」の場合、予約日前日にリマインドメールを送る機能や、キャンセル待ち機能、オンライン決済機能、団体予約機能などもあり、更なる業務効率化・集客力向上が見込めます。また、永久無料ですぐに登録・導入可能で、管理画面もシンプルでわかりやすいため、システムが苦手でも気軽に利用することができます。

⒉電子チケットシステム

電子チケットシステムは、イベントページ作成→チケット販売→決済→入場者・売上管理を全て自動化することが可能です。


電子チケットシステムを導入するメリットは、

1.電子スタンプやQRコードの読み取りで、スムーズな入場を実現
2.偽造や複製がしにくいため、セキュリティレベルの向上
3.紛失やチケット忘れの防止
4.非接触販売が可能
5.購入から入場までの流れが円滑

などの5点が挙げられます。これにより、チケットもぎりの人材や手間を削減し、他の業務をスムーズに進めることができます。また、顧客のチケット発券までの流れや、当日のチケット準備の時間を割くことも可能です。顧客が混雑や接触を避けることにもつながるので、安心したイベント運営を行えます。

エイベックス・デジタル株式会社が提供するチケット販売サービス「Live Pocket(ライヴポケット)」の場合、混雑や行列を防げる時間指定チケット・整理番号チケットの発行や、リアルタイムで入場状況を把握できる機能があるため、ソーシャルディスタンスに対応しながらライブイベントを行うことが可能となります。

⒊ライブ配信サービス

コロナ禍という状況で新しいライブの形として急増したのが、有料オンラインライブです。


オンラインライブを行うメリットは、

⒈会場費や準備時間などのコスト削減
⒉安価で無制限のチケットにより、ライブ視聴のハードルが下がり、新たなファンの獲得が可能
⒊場所・時間問わず視聴できるため、集客力アップ
⒋三密の回避

などの4点が挙げられます。これにより、チケットが落選することもなくなるため、より多くのファンがライブを鑑賞できたり、ライブ終演後もアーカイブを何度も楽しめたりと、顧客の細かな願望を実現することができます。

株式会社イープラスが提供する「Streaming+(ストリーミングプラス)」の場合、ライブ配信・疑似生配信・オンデマンド配信・Zoom配信の4つのタイプがあるため、目的やイベント規模・費用に応じて選ぶことができます。また、スタジオや機材・スタッフを手配することが可能なので、初心者でも安心して利用できます。

DX化によって切り開く未来

ライブエンターテイメント業界は、新型コロナウイルス流行にともない、活動が難しい状況となっていました。しかし、接触や三密を避けるために導入された、オンラインライブや電子チケット・予約サイトの利用により、利用者は多様な楽しみ方や新たな選択肢を獲得しました。

また、ぴあ総合研究所はレポート「ライブ・エンタテインメント市場がコロナ前の水準に 回復するのは、最短で2023年 / ぴあ総研が将来推計値を公表」で、

  • 緊急事態宣言による制限の中にあっても公演の供給と需要が回復し始めたこと
  • 開催制限下にイベント開催を心待ちにしていたアーティ スト・観客による反動増がみこまれること
  • ライブ会場不足問題の解消されてきたこと

の3点を回復を後押しする要因として挙げたうえで、次のように推測しています。

ライブ・エンタテインメント市場は、2022年から急速に再起し、2023年には、一気にコロナ前の水準にまで回復し、2023年以降、with/afterコロナ下での新たなビジネスモデルを描きながら、年平均成長率2.4%の安定した成長を実現すると推測されます

コロナ禍という状況に合わせて講じられた対策でしたが、これらはライブエンターテイメント業界と顧客に新しい希望をもたらしました。

エンタメ業界がコロナ以前の水準まで回復するために、そして更なる発展を遂げる鍵を握っているのはデジタル化・そしてDX化です。新しいサービスを受け入れ、柔軟に対応していくことは、ライブエンターテイメント業界にコロナ禍以前を超える隆盛をもたらすのかもしれません。

まとめ

コロナ禍という情勢に対応していくには、DXは必要不可欠であり、これからも業界の盛衰に大きく関わっていきます。

DX化はライブエンターテイメント業界の新しい可能性を切り開くきっかけをあたえました。時間や場所を選ばず何度も視聴することができるライブ配信、スムーズな入場を実現した電子チケット・新しい予約方法は今までのライブエンターテイメント業界になかった新しい価値として、人々に受け入れられています。

今後、ライブやコンサート・フェスティバルの在り方はますます変容していくでしょう。DX化がもたらした新しい価値は、エンタメ業界の更なる発展・文化の広がりに貢献していくことが期待されます。