個人事業主が知っておくべき融資・補助金制度の基礎

個人事業主が知っておくべき融資・補助金制度の基礎

新型コロナウイルスの感染拡大の影響により経済の先行きが不透明になっています。こうした状況の中で、事業を継続していくためには新しい変化を受け入れ、時代に合った事業展開が求められます。

新たな機材の購入やシステムの導入、商品の仕入れなど事業を営むには資金が必要です。何か新しいことをしようにも、当面の運転資金や設備投資資金がなければ実行に移すことはできません。

そこで検討すべきなのが、融資・補助金制度の活用です。この記事では、個人事業主が知っておくべき融資・補助金制度について解説していきます。

融資の概要

融資とは「お金を借りる」ことです。つまり、金融機関等からお金を借りることで、一言でいうと「借金」です。借りたお金ですので、当然返済義務が生じます。返済の際には、借りた金額+利息を支払う必要があります。

借金というと、消費者金融から借りるお金や個人ローン(買い物、車、住宅など)を思い浮かべる方も多いかと思いますが、事業の融資について言えば、事業のために使う資金の借入を指します。

個人の借金・・・主に消費を目的とした借入。例 高額な買い物、車、住宅、ギャンブルなど
事業の融資・・・
事業のために使う資金の借入。事業で利益を生むことが目的


つまり事業の融資とは、資金を元手に新たにお金を作ることを目的としてお金を借りることを言います。得てして、日本人は「お金を借りることは悪いこと」という認識を持つ方が多く、借金に対してネガティブなイメージを抱く傾向があります。

しかしながら事業の融資は、売上・利益を増やすことを目的とした事業拡大に向けて検討すべき事案となります。

融資を受けるための注意点

事業の融資を受けようという際、その融資元の筆頭候補は金融機関です。しかし、金融機関もまた一企業です。民間の金融機関では返済時に生じる利息で儲けを得ているため、確実に返済できる見通しがある方にお金を貸したいと考えます。

そのため誰にでもお金を貸すわけではありません。将来的に返済の見通しが持てなければ、金融機関から融資を受けることは難しいといえるでしょう。

金融機関から融資を受けるためには事業の計画性や、融資を受けることでどのように事業成長が見込めるかを具体的根拠として示す必要があります。

融資の種類

融資には金融機関によって「公的融資」と「民間融資」の2つに分けられます。

・公的融資・・・国や自治体による融資。日本政策金融公庫や商工組合中央金庫などの政府系金融機関による融資の他、地方自治体が民間と連携して提供する制度融資がある

・民間融資・・・都市銀行、地方銀行、信用金庫など民間の金融機関から受ける融資。公的融資に比べ審査が厳しい傾向があり、特に事業実績が浅い内は審査が通りにくいとされる

それぞれの融資について解説していきます。

公的融資1 日本政策金融公庫(国金)

日本政策金融公庫は政府が100%出資している、国が運営する金融機関です。

日本政策金融公庫は中小企業・個人事業主を支えることを目的としており、金融機関からの融資が難しいとされる開業したばかりの個人事業主への支援も積極的に行っています。

<日本政策金融公庫のメリット>

  • 融資が受けやすい
  • 融資の種類が豊富
  • 新規開業資金融資など、開業融資が充実
  • 融資期間が長い
  • 経営に関するアドバイス・支援をしてくれる

詳細は日本政策金融公庫のホームページよりご覧ください
日本政策金融公庫

公的融資2 制度融資

制度融資は、主に中業企業・スタートアップベンチャーや、起業家・個人事業主が利用する融資制度です。地方自治体が窓口となって提供されています。

自治体が地域経済の政策支援の一環として実施している融資制度のため、民間金融機関の融資に比べて、さまざまなメリットがあります。

<制度融資のメリット>

  • 融資の審査ハードルが低い
  • 金利が低い
  • 経営に関するアドバイス・支援が受けられる

東京都の制度融資情報はこちらも併せてご覧ください
東京都産業労働局「東京都中小企業制度融資」

※その他の地域(東京23区/都道府県/市区町村)については各自治体のサイトよりご確認ください。

民間融資1 プロパー融資

民間融資の中でもプロパー融資とは、信用保証協会を挟まずに金融機関から直接お金を借り入れる融資のことです。

プロパー融資を受けるためには、事業の実績などが大きく影響するため、創業時や実績が乏しい企業でプロパー融資を受けることは基本的にはできません。プロパー融資を受けるためには、まずは信用保証協会保証付融資で実績を積むといった対策が必要となります。

<プロパー融資のメリット>

  • 融資決定が早い
  • 保証料が掛からない
  • 限度額がない

民間融資2 信用保証付融資(保証協会付融資)

信用保証付融資とは、金融機関から融資を受ける際に保証協会が保証人となることで企業が融資を受けやすくするための制度です。

銀行のプロパー融資の審査に比べて、信用保証審査の方が通りやすいという特長があります。主に中小企業や小規模事業者のための制度といえます。

ただし注意点としては、信用保証協会に保証料を支払う必要があることや、融資限度額が決まっているので(無担保の場合8,000万円、担保有の場合2億8,000万円)、プロパー融資で借入ができるのであればそちらを活用した方が良いでしょう。

<信用保証付融資のメリット>

  • 信用保証協会が返済に関するリスクを負うため、金融機関から融資が受けやすい

信用保証付融資について更に詳しく知りたい方はこちらも併せてご覧ください。
一般社団法人全国信用保証協会連合会の公式ホームページはこちら

補助金の概要

補助金とは、国や地方自治体から給付される資金のことです。融資と異なり、基本的に返済義務はありません。

また、同様に返済義務のないお金として「助成金」があります。

補助金の種類

国や地方自治体では様々な補助金制度を設けています。今回は主に開業時あるいは開業したばかりの事業所に役立つ補助金を紹介していきます。

小規模事業者持続化補助金

小規模事業者持続化補助金とは、従業員の少ない企業や個人事業主などが事業計画書(創業計画)を作成して申し込むことで受給できる制度です。

補助対象者
商工会議所の管轄地域内で事業を営んでいる「小規模事業者」及び、一定の要件を満たした「特定非営利活動法人」

※小規模事業者の定義
・商業・サービス業 常時使用する従業員の数5人以下
・サービス業のうち宿泊業・娯楽施設 常時使用する従業員の数20人以下
・製造業その他 常時使用する従業員の数 20人以下

補助対象となる事業内容
策定した「経営計画」に基づき、商工会議所の支援を受けながら実施する、地道な販路開拓等(生産性向上)のための取組であること。あるいは、販路開拓等の取組とあわせて行う業務効率化(生産性向上)のための取組であること。
(参照:小規模事業者持続化補助金WEBサイトより

補助対象の事例(一部)
(1)地道な販路開拓等(生産性向上)の取り組みについて
・新たな販促用チラシの作成、送付
・新たな販促用PR(ウェブサイトでの広告)
・ネット販売システムの構築
・新商品の開発
・ブランディングの専門家から新商品開発に向けた指導、助言

(2)業務効率化(生産性向上)の取り組みについて
・新たに経理・会計ソフトウェアを購入し、決算業務を効率化する
・新たに労務管理システムのソフトウェアを購入し、人事・給与管理業務を効率化する

申請から補助金受領までの基本的な手続きの流れ

※補助事業を実施した終了後は、実績報告書および支出内容のわかる関係書類等を提出が必要です。

詳細はこちらのウェブサイトをご覧の上、ご不明点は直接お問合せください。
「小規模事業者持続化補助金」公式WEBサイト

地域中小企業応援ファンド(スタート・アップ応援型)

地域中小企業応援ファンド(スタート・アップ応援型)は、中小機構と各都道府県の役所・金融機関(地方銀行)などが共同出資し、組織化された地域独自の官民ファンドです。

中小企業支援機関の運用によって得られたファンド収益を、地域貢献性が高い新事業に取り組む中小企業に対し助成をしています。

補助対象者
・中小企業者・創業者
・中小企業者・創業者の支援機関
・その他、NPO法人など

補助対象となる事業内容
・各地の農林水産物や伝統技術を活用する、商品開発・販路開拓の取り組みなど
・研究・商品開発、需要の開拓に関わる費用等

補足
中小企業者と農林漁業者が有機的に連携する、商品開発・販路開拓を支援する「農商工連携型地域中小企業応援ファンド」もあります。

詳細はこちらのウェブサイトをご覧の上、ご不明点は直接お問合せください。
中小企業基盤整備機構WEBサイト

まとめ

融資や補助金を活用することで、事業成長に向けた資金調達が可能です。もちろん、一切の借入をせずに「無借金経営」をすることは素晴らしいことだと思いますが、開業・起業当初から潤沢な資金を確保できることは稀ですし、新規事業や設備投資はタイミングが重要です。

目の前に大きなチャンスがあるにもかかわらず資金がないという理由で、挑戦を諦めてしまっては、大きな成功を得ることも難しいでしょう。今回ご紹介したように、民間金融機関以外にも融資・補助金を積極的に行っている団体は数多くあります。

単にお金を貸すだけではなく、経営に関するアドバイスも行っているので、まずは相談してみてはいかがでしょうか。

最後に、今回ご紹介した融資・補助金関連の情報をまとめます。

補助金・助成金に関する情報はこちらの記事も併せてご覧ください。
次世代採用ナビ|【新型コロナウイルス感染症】助成金(補助金)・融資・相談窓口の情報まとめ

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