事業承継で知っておきたいトラブル事例と予防策【5分で読める経営知識】

事業承継で知っておきたいトラブル事例と予防策【5分で読める経営知識】

事業承継やM&Aにて、会社や事業を第三者に引き継ぐことは簡単な選択ではありません。親族・親族外・M&Aなど色々な事業承継の方法がありますが、いずれの場合も事業承継を行う際は慎重さと、ベストな選択肢を追求する姿勢が大切になります。

事業承継やM&Aを行う際は、主にコンサルティング会社に相談や仲介を依頼するケースが多いですが、「事業承継のプロだから安心」と安易に全てを任せきりにしてしまうと、後々になってトラブルが発生する可能性があります。

本記事では、これまでに本当にあった事業承継のトラブル事例をご紹介します。

事業承継のトラブル事例集

事業承継の代表格は「後継者に株式を渡す」ことです。株式とは「経営権」「財産権」という2つの権利があります。

・経営権とは・・・役員を選任するなど、会社を支配する権利
・財産権とは・・・配当や会社清算時の財産をもらう権利

事業承継において発生するトラブルの多くは、この2つの権利が上手く後任に引き継がれなかったことによって起きています。

特に財産権に関しては、自社株式の評価額が想像以上に高くなっているケースがあります。事業承継の相続税・贈与税は株式の評価額によって算出されるため、税負担の重さによって経営が立ち行かなくなるケースもあります。

M&Aを検討するものの売却先が見つからなかった

<事象>
経営者のご子息が会社を継ぐ意思がなく、身近によい後継者が見つからないまま経営者が高齢になってしまい、焦ってM&Aを検討したものの売却先が思うように見つかりませんでした。

<予防策>
事業承継はしようと思った時になって始めるのではなく、まだ経営者として体力がある時から将来を見据えて準備を進めておくことが大切です。

新社長と従業員間で関係性が築けず、社員が退職をした

<事象>
M&Aで事業を新しい経営者に承継し、失敗したケースです。前社長が年齢による衰えで引退し、代わりに30代の新社長が就任しました。

旧態依然の経営を全て見直し、イチから会社を立て直そうと半ば強引な組織改革を行いました。その結果、従業員からの不満や反発が続出し、結局古参社員含めて多くの従業員が退職をしてしまいました。

<予防策>
長年勤めて来た方は変化を嫌います。ましてや社長といえど、信頼関係が築けていない人からの指示・命令はなかなか受け容れられないものです。

トップダウンも時には大事ですが、前提として信頼関係を築くことが第一です。普段からの労いや感謝を示すことで信頼関係は築けるようになるでしょう。

相続トラブルを気にし過ぎたことでトラブルになった

<事象>
前経営者のAさんは、身内が相続で揉めないために、子どもや親族に平等に株式を相続させました。しかし、株式を平等に相続したために、経営権が掌握できず経営が混乱してしまうという事態が発生しました。

<予防策>
相続に関するトラブルは避けたいものです。しかし、平等であることが良いとは限りません。次期経営者を誰にするか、株式を誰にどれ位の割合で相続させるかは、生前の内から遺言書を作成するなどして準備を進めると良いでしょう。

相続税の支払いでトラブルになった

<事象>
前社長が急逝したため、自社株は会社経営と関係のない親族が相続することになりました。しかし、相続税の支払いでトラブルになってしまい、結果として黒字倒産になってしまいました。

<予防策>
このトラブルの原因は、相続税が相続者の想像以上に高額であり納税資金を確保できなかったことにあります。

事業承継はいずれも税金が発生します。株式以外にこれといった財産がない場合(自宅のみなど)には、納税資金の確保が特に必要と言えます。

納税資金がない場合、自社で株式を買うという方法があります。しかし、会社の体力を削ってしまう点がデメリットです。運転資金が潤沢でない場合は、経営に悪影響を及ぼす恐れもあります。 相続前から、税理士などに相談をして、準備を進めておくことが必要です。

まとめ

この記事では、実際の事業承継時に起きたトラブルを元に予防策を解説してきました。

事業承継は「経営面」「財産面」において大きな影響があります。特に中小企業にとって、経営者は顔であり影響力が大きいため、後任への引継ぎが上手くいかなければ事業経営が成り立たなくなる可能性があります。

経営に関しては、引退を見据えて、いつ・誰にバトンタッチをするか考えておく必要があります。極端な話、仮に「明日自分にもしものことがあった場合」でも、経営が滞りなく回るための準備をしておく必要があるでしょう。

財産面に関しても、先述したように想像以上に株式評価が高くなっている場合などもあります。税理士や、弁護士などの専門家に相談をしておくことで残された人同士のトラブルを防ぐことができます。

今回ご紹介したトラブル事例はほんの一部です。健康である内に、引退の準備を進めることが経営者としての務めといえるでしょう。

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