2000年代後半、お見合いや縁談の減少により、結婚も就職活動と同じく、自ら動いて準備や情報収集をする必要があるという発想から、婚活という言葉が生まれました。婚活は当初、結婚相談所や婚活パーティーの利用が主流でしたが、デジタル化によるマッチングアプリの登場にともない、市場は急速に拡大しました。
株式会社トゥエンティトゥが発表した「マッチングアプリ白書2026」によると、マッチングアプリの市場規模は1,094億円と予測され、2030年には1,380億円に到達する見込みです。また、東京商工リサーチの調査によると、2026年におけるマッチングアプリの運営会社数は35社となり、前年の28社から25.0%増加して過去最多を記録したことがわかりました。背景には、参入障壁が低い事業であることが挙げられ、500万円未満の小資本で参入した運営会社数は全体の57.1%を占めています。
競争が激化していることから、集客にかかる広告宣伝費も高騰しており、事業者にとってコスト削減がより重要な課題となっているほか、利用者側でもニーズの多様化が進んでいます。短期間での結婚を目指したい、相手のプロフィールの信頼性を重視したい、仲人による手厚いサポートを受けたいなど、従来のマッチングアプリだけでは十分に応えにくい要望もみられます。こうした背景から、効率的に婚活を進められることや、専門的な支援を受けられることを重視し、結婚相談所を選ぶ人も多くなっています。
コスト削減と多様なニーズへの対応が求められる婚活業界において重要なカギを握るのが、「デジタルトランスフォーメーション(以下、DX)」です。経済産業省の「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX 推進ガイドライン)」では、DXを以下のように定義づけしています。
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」
事業における優位性を獲得するためには、DXの推進が欠かせません。例えば、AIを活用することで、現場の業務負担を軽減できます。
本記事では婚活業界のDX化に着目し、現状の課題や導入によるメリット・デメリット、そして実際の導入成功事例を紹介しながら解説します。
婚活業界のDX化における課題
コスト削減および、多様な顧客ニーズへの対応が必要な婚活業界ですが、以下のような理由からDX化が停滞しています。
1.プライバシー保護の厳格さ
婚活サービスで登録されるデータは、年齢や学歴、職業、身長・体重、結婚歴、本人確認用の公的身分証明書の画像など、秘匿性の高い個人情報です。また、AIを活用したマッチングシステムを導入する場合は、データ分析のため、ユーザーの行動履歴や価値観に関する情報の蓄積が必要になります。これらは強固なガバナンス体制のもと、ユーザー本人が同意したプライバシーポリシーの枠内でしか使用できません。
2.初期投資とシステムの維持
婚活アプリや会員管理システムを開発する場合、扱う個人情報量が多いため、一般的なWebサービスよりも高い信頼性が求められます。そのため、本人確認システムの導入やハッキング対策、膨大なデータを扱うためのサーバー環境の整備などが必要となり、高額な初期費用と維持費がかかります。結婚相談所の多くは個人経営や中小規模であるため、まとまった原資がなく投資を諦めるケースも少なくありません。
3.成婚プロセスにおけるデジタル化の難しさ
結婚において重視される空気感や相性は、デジタル技術で再現したり、言語化したりすることが難しいとされています。また、人生の重大な決断を支援する業界だからこそ、AIやシステムだけの効率化はユーザーに冷たい印象を与えやすくなります。特に、お見合いの引き合わせや交際後の感情の機微の読み取り、結婚への決断を後押しするといった、従来のカウンセラーが担うプロセスは属人的です。このようなアナログな領域は、デジタル技術だけでは代替しきれません。
婚活業界がDX化するメリットとデメリット
婚活業界におけるDX化には大きな可能性がある一方で、懸念も少なくありません。そのため、メリットとデメリットの両面を理解し、適切に実施することが重要です。
メリット
1.効率化とコスト削減
入会審査の自動化や24時間対応のチャットボットなどの導入により、少人数で効率的な運営が可能になり、人件費を削減できます。また、オンライン面談や確認書類のデータ化を取り入れることで、店舗維持や紙の資料作成などの物理的コストを排除できます。
2.AI活用によるマッチング精度の向上
年齢や年収、学歴といった従来の条件検索だけではなく、過去の閲覧履歴やメッセージ傾向、顔の好み、価値観診断などのデータをもとに、AIが統合的にユーザーに合った相手を抽出します。また、成婚退会したカップルの共通点や隠れた価値観の一致を分析することで、潜在的に相性のよい相手を見つけやすくなります。
デメリット
1.セキュリティ、個人情報の漏洩リスク
機密性の高い会員データをデジタルで一元管理するため、サイバー攻撃を受けた際の個人情報漏洩リスクが高くなります。また、なりすましやロマンス詐欺といった不正ユーザー排除のために、高度な本人認証システムの導入や継続的なセキュリティ投資が必要になります。
2.競合との差別化の難しさ
マッチングのAI化により、どの婚活会社も似たようなアルゴリズムや管理アプリを導入するため、サービス内容が均一化する傾向があります。自動マッチングが主流となり、独自のノウハウや手厚いサポートといった強みを打ち出しにくくなった結果、機能面での差別化が難しくなります。これにより、料金の安さだけでサービスを比較され、ブランド価値が低下する可能性があります。
婚活業界におけるDX導入事例
婚活業界におけるDX推進には、デメリットもある一方、多くのメリットが期待できます。なかでも、以下の3つの取り組みは、コスト削減やマッチング精度の向上において特に有効です。
1.予約システム

予約システムは予約受付から決済、顧客管理、集客までをすべて自動化し、データ管理の効率化を実現します。業界トップシェアを誇るクラウド型予約システム「RESERVA(レゼルバ)」は、350業種以上に対応しており、その使いやすさから35万社を超える企業に導入されています。無料のフリープランから利用でき、初めて予約システムを導入する人にもおすすめです。
婚活イベントでは、参加人数や男女比の調整、参加条件の確認、開催前の案内など、募集開始から当日まで多くの運営業務が発生します。予約システムを導入して申し込み情報を一元管理し、抽選や仮予約受付、リマインドメールなどを活用できます。
婚活サービスにおすすめの機能として、抽選機能や仮予約受付機能、予約リマインドメール機能、予約時アンケート機能などが挙げられます。これにより、参加者にとって申し込みやすい環境を整えながら、主催者の受付・連絡業務を効率化できます。
参考サイト:RESERVA公式サイト「婚活パーティーのための予約システム」
RESERVA公式サイト「導入事例2選・婚活イベント編」
2.AIマッチングシステム

AIマッチングシステムとは、AIが趣味や価値観、希望条件といったデータを分析し、相性がよい相手を自動的に抽出・紹介する仕組みです。
「TOKYO縁結び」は、東京都生活文化局が運営する公的な婚活サービスとして、公開されました。価値観診断テストの結果をもとに、AIが交際に発展する可能性の高い相手を紹介する仕組みを採用しており、結婚相談所に近い手厚いサポート体制も特徴です。
従来のマッチングサービスは利用が手軽な一方で、既婚者が紛れ込んでいることや経歴の詐称といった安全面の不安が根強くありました。そのため、入会には本人確認書類だけでなく、独身証明書や年収証明書、誓約書の提出に加え、スタッフとの入会面談も必須となっています。
参考サイト:東京都「TOKYO縁結び」
都庁総合ホームページ「 AIマッチングシステム「TOKYO縁結び」」
3.AIお見合いリハーサル

恋愛や対人コミュニケーションに不安があり、お見合いに対して心理的なハードルを感じている人も少なくありません。こうしたお見合い前のユーザーをサポートするため、株式会社IBJは、「AIお見合いリハーサル」の提供を開始しました。
AIがリアルな会話を再現するお見合いシミュレーションを行い、会話の練習をしたり、改善点についてアドバイスを受けたりできます。経験豊富な仲人の知見やマナー基準がアルゴリズムに組み込まれており、自分では気づきにくい会話の癖や、好印象につながるコミュニケーションのポイントを実践的に学べます。
参考記事:株式会社IBJ「AIお見合いリハーサル」
まとめ
現在の婚活市場では、AIを活用したマッチングの効率化が進んでいる一方で、雰囲気をくみ取った紹介や意思決定の後押しといった、情緒的な価値を提供できる仲人へのニーズも存在しています。
競合過多な市場で他サービスとの明確な差別化を図るためには、AIと人間によるサポートを融合し、利用者に高い納得感と成婚率を提供していくことが求められます。