日本オートキャンプ協会の「オートキャンプ白書2022」によると、2019年に860万人だったキャンプ参加人口は、コロナ禍の2020年に610万人まで減少しました。その一方で、新型コロナウイルスが猛威を振るい続けた2021年において、キャンプ参加人口は750万人にのぼりました。密を避けて楽しめる「ソロキャンプ」などの新たなアウトドア体験が広がりを見せていることから、今後も新たなアウトドアサービスの拡充が期待されます。
また、株式会社矢野経済研究所の「アウトドア用品・施設・レンタル市場に関する調査」によると、2022年度の国内アウトドア用品・施設・レンタル市場規模は4,536億7,000万円であり、2021年に比べ増加しました。キャンプ参加人口は2021年から2022年にかけて減少しているものの、アウトドア用品等の市場規模が拡大していることから、キャンプをコンスタントに楽しむキャンパーが増加したことが予想されます。また、当市場規模は、2026年度において5,274億6,000万円にのぼるとされることから、キャンプをはじめとして、アウトドア業界の市場規模は今後も持続的な成長が見込めます。
このように、コロナ禍から回復しつつあるアウトドア業界ですが、新たなアウトドアサービス事業者の参入による業界内での競争激化が懸念されます。そのような中で、アウトドアサービスの事業者として存続し続けるとともに、業績を向上させていくためには、DX(デジタルトランスフォーメーション)化が有効です。アウトドア施設の予約など、これまで人の手でおこなっていた作業をシステム上で一括管理すれば、業務の効率化と生産性の向上が期待できます。さらに、経営に必要な人員や時間などのコスト削減も図ることができます。
本記事では、アウトドア業界でのDX活用をもとに、DX化の重要性と可能性を考えていきます。
アウトドア業界におけるDX化とは
まずDXとは、経済産業省の「デジタルガバナンス・コード2.0」で以下のように定義づけされています。
企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。
デジタル化で業務の効率化や生産性の向上を図り、快適な社会環境へ変革していくことをDXといい、時代にあわせた価値観やシステム、サービスを構築する目的があります。
例えば、予約システムの導入で「アウトドア施設の予約・決済・顧客情報をデジタル化し、一元して管理する」というのはDX化の例の1つで、「予約のスケジュール管理や予約者の情報管理などの人為的ミスの削減」や「スタッフの負担軽減」の実現につながります。このような業務の効率化は「サービスクオリティの向上」につながり、顧客損失の防止になります。
アウトドア業界におけるコロナ禍からの業績回復や人材不足の解決に、DX化は大きく尽力します。アウトドア事業に最新のデジタル技術を組み込むことで、新しいアウトドアサービスのありかたを考えることが可能です。アウトドア業界は、コロナ禍とDX化を経て、今までにないアウトドアサービスを創り出すことが期待されます。
アウトドア業界におけるDX導入事例
ここからはアウトドア業界のDX導入事例を紹介します。
1.予約システム
「RESERVA(レゼルバ)」は業界屈指の人気を誇るクラウド型予約システムで、導入数は30万社以上、利用業態は350種類以上にのぼります。100種類以上の豊富な機能をそろえている点や、初期設定から利用開始まで最短3分という圧倒的な操作性が高く評価されています。また、はじめての利用やお試しでの利用にうれしいフリープランの展開も特徴的です。
アウトドア施設の予約を家族や友人と一緒にまとめて予約できる団体予約機能や、利用者の予約促進が期待できる残席数表示、属性別に料金が設定可能な複数料金設定など、アウトドア施設の経営に特化した機能が多く搭載されています。
また、オプション設定機能ではメニューの予約時にオプションを同時に追加することができます。店舗側でオプションメニューの案内をせずとも、予約の流れでオプションを把握させることができるため、効率的な業務運営や売上の向上が期待できます。
2.シェアリングサービス
「Carstay」は、キャンピングカーのレンタル・カーシェア、車中泊スポット・キャンプ場のスペースシェアサービスを提供しています。本サービスは、キャンピングカーや車中泊スポットなどのホルダー・ホストが、遊休資産をゲストに貸し出せるという非常に合理的なサービスです。これにより、ゲストは安価に旅を楽しめるとともに、キャンピングカーやスポットを貸し出すホルダーやホストは副収入を得られます。キャンピングカーは、SUVや輸入車、ハイエースなど複数の車種から選択できるほか、出発地は日本全国から選択できます。
ゲストがサービスを利用する際は、会員登録を済ませたのち、キャンピングカーの車種や地域を絞って検索ができます。予約後は、ホルダーやホストと直接連絡を取るため、スムーズな利用が可能です。
3.VRショップ
アウトドア・レジャー関連用品のブランド「キャプテンスタッグ」は、VR空間でキャンプギアを閲覧できる「CAPTAIN STAG VRフィールド(キャプテンスタッグブイアールフィールド)」というサービスを展開しています。専用サイトでは、立体的で没入感のある360°のVR空間が用意されており、キャンプ場にいるような感覚でテントや各ギアを見ることができます。7つにも及ぶVR空間の種類が用意されており、実現したいアウトドア体験の雰囲気に沿って選択可能です。
テントに限り、商品ページに遷移してサイズ等の詳細情報を確認することができます。他のギアも、VR空間で商品情報について記載があるため、さまざまなギアを比較できます。テントやキャンプのギアは高価なものが多く、現物を見ずに購入する場合はためらいが生じますが、VR空間で商品を確認できるようにすることで、消費者の購買意欲の向上が期待できます。
アウトドア業界がDX導入で進む未来
コロナ禍からの回復により、アウトドア業界は拡大しつつあります。経済産業省が公表している「第3次産業活動指数」によると、「生活関連娯楽サービス」の活動指数は2020年4月に約50%に下落したものの、2024年10月時点で92.5%にまで回復しています。コロナ禍が明け、キャンプやバーベキューの需要が高まりつつあることから、今後もアウトドア業界の規模はさらに拡大し、業界内の競争はさらに激しくなることが予想されます。
激しい競争の中で生き残るためには、適切にDX化を進めることが重要です。業務効率化や人件費削減を目的としたDX化は、コストや費用対効果を考慮したうえで導入を進めなければ、生産性や利益の低下等が懸念されます。そのため、段階を踏んでDX化を進めていかなければなりません。そこで、まずはかんたんに運用が可能な予約システムの導入から始めるなど、DX化を着実に進めることが重要です。業務やサービスのDX化を徐々に推し進め、労働環境の改善や顧客体験価値の向上を図ることで、他の事業者との差別化が期待できます。
まとめ
アウトドア業界はコロナ禍で大打撃を受け、回復途上ではありますが、依然としてアウトドアの需要は今後も上昇が期待できます。アウトドアの事業者が効率的な経営や顧客体験価値の向上を実現するためには、業務やサービスの提供方法のDX化が有効です。DX化により、業務効率が改善され、事業者やスタッフの負担が減るだけでなく、利用者の利便性が向上します。また、利用者に新たなアウトドアサービスの体験を提供することで、他の事業者との競争力を高めるほか、他の事業者との競争力を高めるほか、アウトドア業界の活性化に貢献できます。