事業承継とM&Aの違い|5分でわかる経営基礎知識

事業承継とM&Aの違い|5分でわかる経営基礎知識

会社の経営を継続させていくうえで、常に倒産や閉業などのシナリオはどの企業や事業者も完全に否定できるものではありません。

また経営者として自身が引退をしても、法人は残ります。従業員やその家族の生活や取引先のことを考えた場合、引退=廃業とはそう簡単にはいかないものです。

そうした状況の中での選択肢一つとして、「事業承継」があります。事業承継は、会社の経営を後継者に引き継ぐことをいいます。事業承継を承継者で分ける場合には、大きく3種類があります。

  1. 親族内への承継
  2. 親族外(従業員等)への承継
  3. M&Aで承継

また、事業承継の手段には、「相続や贈与」、「合併や買収(M&A)」があり、前者の「相続や贈与」は親族承継や親族外承継に用いられることが多く、後者の「合併や買収(M&A)」は第三者承継に用いられることが多いことが特徴です。

本記事は、これらの事業承継について解説をしていきます。

親族への承継

親族内の事業承継とは、主に息子・娘などの子息に承継をすることです。中小企業の事業承継といえば、20年以上前は親族内事業承継が主流でした。しかし、現在では親族内事業承継から親族外事業承継へと急速にシフトしつつあります。

中小企業庁の調査によると、直近10年では法人経営者の親族内承継の割合が急減し、従業員や社外の第三者といった親族外承継が6割超に達しているというデータがあります。

参照:中小企業庁 事業承継に関する現状と課題

親族内承継が減少している要因としては時代背景による意識の変化があります。

<廃業予定企業の主な廃業理由>
・事業に将来性がない
・子どもには自由に自分の道を歩んでほしいと考えるようになった
・子ども側に継ぐ意思がない
・子どもがいない

60歳以上の経営者のうち、50%超が廃業を予定しており、特に個人企業においては、68%が「自分の代で事業をやめるつもりである」と回答しています。

親族外(従業員等)への承継

親族に後継者がいない場合、従業員など親族外に承継するケースも増えています。

親族外承継を行う際には2つのパターンがあります。

1つめは「経営」だけを承継する方法で、2つめは「経営」と「自社株式」の両方を承継する方法です。

前者の「経営」だけを承継する場合は、現経営者が自社株式をそのまま保有することができるため、昨今増えている事業承継のケースです。ただし、この場合自社株の売買の問題や個人保証に関する問題が先送りになっているため、その際の対処方法を遺言等によって示しておく必要があります。

一方、後者の「経営」と「自社株式」の両方を承継する場合は、完全に後継者に事業を引き継ぐことになります。

この場合、後継者が自社株式を取得するための資金が必要となるため、資金調達方法に関しても検討が必要となります。

M&Aで承継

M&Aとは、企業間での合併(Mergers)と買収(Acquisition)のことです。一般的には企業の経営権を別の企業に移転・譲渡することを指します。

M&Aを行うことで買収側は、技術力や人材確保が一気に進むため、事業の成長と拡大を行う際には非常に効率的な手法です。事業の多角化を進める際にも、イチから新規事業を立ち上げるよりも、既にノウハウや実績がある企業を買収することで、市場シェアを獲ることが可能です。

反対に売却側にとって、M&Aはどのようメリットがあるか解説をしていきます。

<売却側のM&Aのメリット>

  1. 後継者問題の解消
  2. 従業員の雇用を守る
  3. 不振事業からの撤退
  4. 売却による利益獲得

このようにM&Aを行うことで、後継者選びの選択肢の幅を広げることができます。M&Aを成功させることで従業員の雇用を守りながらも、経営者は売却による利益を得ることも考慮することができます。

現在では、M&Aは企業間で行われるものと思われるかもしれませんが、昨今は個人が事業を購入・承継できる個人M&Aも注目されつつあります。

個人M&Aの仲介サイトでは、事業承継に悩む地方中小企業の案件も売りに出されています。

まとめ

この記事では、親族内承継、親族外(従業員)承継、M&Aによる承継の大きく3つをご紹介してきました。

少子化や時代環境の変化により、かつて主流だった親族内承継はどんどん少なくなっています。そのような中で個人M&Aなどは、インターネットや仲介会社などを使って、会社を買いたいという人をマッチングさせる画期的なサービスで、まさに今の時代にあった手法です。

しかし、現在働く従業員の視点で見ると、ある日突然会社のトップが全く知らない人に代わるというのは一大事です。逆に親族内承継であれば、従業員の理解も得やすいためスムーズな承継が可能です。

会社を将来的にどうしていきたいか。にもよりますが、事業承継の方法を誤ると、従業員の離職の引き金にもなりかねません。いずれの承継方法の場合でも、メリット・デメリットがありますので、ぜひあらゆる方向から事業承継について考えてみて頂けたらと思います。

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