日本政府観光局の「訪日外客数(2024年12月および年間推計値)」によると、2024年の年間訪日外客数は36,86万9,900人となり、過去最高記録を更新しました。この数字は、前年と比べて47.1%の増加にあたり、急激な伸び率であることがわかります。
このような訪日外客数の増加に伴って人やモノを日本各地に運ぶ鉄道業界の需要が高まっています。国土交通省の「鉄道輸送統計年報(2023年度分)」によると、JR旅客輸送は旅客数量合計で84,3億人となっており、前年比11,5%増です。新幹線の旅客数量も3,6億人で前年比20,6%増であり、電車・新幹線ともに利用者数は増加しています。
今後さらに盛り上がっていく鉄道業界において、働く人々の負担減少や業務効率化のためにはDX(デジタルトランスフォーメーション)化の取り組みが欠かせません。具体的には、電車内での犯罪防止や、新幹線の予約から乗車までのスムーズな流れを作り出す仕組みづくりにおいて、DXを活用することで、よりよいサービスの提供が可能になります。
本記事では、なぜ鉄道業界にDXを導入するべきかについて、具体的な活用例を交えながら解説し、業界の今後についても探っていきます。
鉄道業界におけるDXとは
まず、DXとは経済産業省の「デジタルガバナンス・コード2.0」で以下のように定義づけされています。
企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。
DXとは、デジタル化によって業務効率化や便利で快適な社会の実現を目指し、生活や労働環境をよりよいものへと変革していく取り組みを指します。デジタル技術の導入は生産性の向上、クオリティの高いサービスなどの強みに直結するため、企業がその業界において優位になることが期待できます。
DXの具体例として、予約システムを導入して「ネットでかんたんに新幹線のチケットを予約する」ことが挙げられます。これにより「時間を問わない予約受付」や「業務負担の軽減による人件費の削減」が実現可能になり、顧客満足度の向上やサービスクオリティの増進につながります。
DX化の導入によって、利便性が高まるだけでなく、データ収集による需要の把握や、間違いのない顧客管理も可能になります。これは需要の高い鉄道業界において、業務の効率化や快適な労働環境を実現する重要な変革です。
鉄道業界におけるDX導入例
ここからは鉄道業界のDX化において有用なサービスを紹介します。
1.予約システム
予約システムは予約受付→決済→顧客管理→集客をすべて自動化し、データ管理を効率化します。
なかでも「RESERVA(レゼルバ)」は350種以上の業種に対応しており、フリープランを含む6種類のプランを用途やニーズにあわせて選択できます。そのため、RESERVAは業界No.1の実績を誇っています。特に鉄道見学を実施する企業や団体に適しており、初心者でもかんたんにシステムを構築できるうえ、インターネットを通じて24時間いつでも見学受付が可能です。顧客が予約日時を忘れないように促す予約リマインドメール機能や、予約希望者が複数人分まとめて予約できる団体予約受付機能によって、来場率の向上と安定した集客が期待できます。
2.スマートEXでチケットレス乗車

スマートEXとはJR東日本、JR東海、JR九州が運用する東海道・山陽・九州新幹線のネット予約サービスです。年会費無料で気軽に始めることができ、かんたんな登録をするだけですぐに新幹線の座席・特大荷物スペースなどの予約が可能です。
スマートEXでは早期予約による割引特典もあり、28日(4週間)前までの予約で「のぞみ」の指定席がお得に購入できます。乗車区間が東京・品川から新大阪までの場合は通常料金から2,480円引きで購入できるため、旅行や結婚式など早くから予定が決まっている人におすすめです。
参考サイト:スマートEX公式サイト
3.車内にAI搭載の監視カメラ設置試験

2023年9月15日から国土交通大臣より、鉄道車両内に防犯カメラを設置することが義務化されました。この措置の背景としては、2021年8月に発生した小田急線車内傷害事件や、同年10月に起こった京王線車内傷害事件などの重大事件が相次いだことによります。防犯カメラの存在を鉄道利用者に知らせることにより、犯罪実行を思いとどまらせる効果が期待できます。
2023年4月末時点での防犯カメラ設置率はJR東日本首都圏在来線と東急電鉄は100%、京王電鉄では87%、東京メトロでは約60%となっており、着実に導入が進んでいます。事件のあった京王電鉄ではリアルタイムで社内様子を見ることができるカメラを設置しています。
参考サイト:国土交通省「防犯カメラ設置の基準に係る論点整理及び検討の方向性」
参考サイト:NHK首都圏ナビ
鉄道業界が進んで行く未来
関西の私鉄ではクレジットカードを専用の機器にかざして改札を通過するタッチ決済が2024年10月末から順次導入されています。大阪メトロでは全駅にタッチ決済可能な改札を設置して、2025年に開催される大阪・関西万博を訪れる外国人でもかんたんに改札を通れるようにしました。
DX化の推進度は業界の盛衰に大きく影響しており、DXを導入しやすい業界こそ、導入の可否の差が歴然になります。また、DXに着手しやすい業界の発展が日本全体のデジタル競争力向上につながります。
今後ますます利用者が増えていく鉄道業界こそDX化による業務の効率化や利便性の向上が、業界の生き残りを左右する要因です。さらに、サービスクオリティや満足度に還元できる点でも、デジタル技術の重要性はますます高まっています。
まとめ
鉄道業界は、安全性の確保と利便性が求められる業界のため、多くの企業がDX化を推進しています。DX化による恩恵を受けやすいからこそ、サービスクオリティや満足度に還元できる、デジタルに向いた業界です。今後、日本におけるDX化の進展は、鉄道業界の隆盛が鍵になるでしょう。